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ドクターズリレー第4回 医療法人永朋会和光メンタルクリニック大阪中津 院長 白岩恭一先生

第四回目のドクターズリレーは、医療法人永朋会 和光メンタルクリニック大阪中津 院長の白岩恭一先生です。

まずは白岩先生の略歴をご紹介させていただきます。


2002年 順天堂大学医学部卒業 
2002年 順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院 精神神経科
2005年 順天堂大学医学部附属順天堂医院 メンタルクリニック
2006年 順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院 メンタルクリニック
2007年 神戸大学大学院医学系研究科精神医学分野 博士課程
2011年 神戸大学医学部附属病院 精神科神経科
2018年 医療法人永朋会 和光メンタルクリニック大阪中津 院長


次に白岩先生へのインタビュー内容です。


① 医師になりたいと思ったのはいつ頃ですか?

大学受験の頃までは職業にこだわらず人の役に立つ仕事をしたいと思っていました。医学部だけでなく色々な学部を受験しましたが、家族のアドバイスもあって医学部に進みました。医師になりたいという強い願望があったというよりは、人の役に立つことができる方法として一番いいかなと思って選んだ感じです。


② 医師になりたいと思ったきっかけが何かありましたか?

医学部に入学した後は、臨床医という道だけでなく、研究医なども考えた時期がありましたが、やはり病棟実習などで実際に患者さん達と接するようになってからは研究医よりも臨床医の方が向いていると思うようになりました。


③ 現在の診療科を選択した理由は?

医学部で勉強をしているとどうしても病気のことに焦点を当てがちになり、高度な技術や知識を求めるのは悪いことではないですが、患者さんと接するという点において「人を見ずして病気をみる」という状況に陥りがちです。精神科の実習で様々な体験をしている患者さん達と接した時に、どうしたらうまくコミュニケーションを取りながら人と接して役に立つ事ができるかということに興味を持ち精神科を志望しました。


④ 開業を決めた理由は

医者になってから約15年ですが、ほぼずっと大学病院で働いてきました。それは充分な知識と経験を積むために必要だと感じていたからです。しかし、上にも書いたように、わたしの場合はどうしても医師になりたくてなったという訳ではなく、たくさんの人の役に立てることが大事でした。ある程度の経験を積んで行くと、大学という大きな組織の中で自分の置かれた立場で出来ること出来ないことの乖離が強くなり、本当はこうしたいのに出来ないというような事が増えてきてしまいました。すごく息が詰まるような環境に感じてしまい、患者さんのために本当にしたいことが出来る環境を探すために開業を選びました。


⑤ どのような治療をしていますか?

大学病院は性質上、地域の医療機関から治療に難渋している患者さん達が移られてこられることも多く、そのような状況の治療ですごく感じたことがありました。それは、多くの場合に医師は診断をつけたがり、つけた診断に対して薬物を投与し、症状があればそれを抑えるために治療を繰り返し、最終的にどのようにしたら治るかを考えていないということです。
私は出来るだけ薬を投与する事だけに頼らずに何が一番その人にとって必要なのかを考えてあげる事に力を注ぐようにしています。


⑥ 現在の仕事をしていてやりがいを感じる時は?

精神科は内科や外科と違って病気の回復に線引きのできない診療科なので、患者さん達も自分の病気が良くなったのか治ったのかよくわからないと感じていることが多いと思います。ですので、よくなるまでの共同作業の中で患者さん達が自分らしさを取り戻したと感じられる時に役に立てたことにやりがいを感じます。


⑦ 5年後の目標を教えてください

精神科、心療内科というとどうしても一度かかり始めると年単位で通院を続けることが多くなる診療科です。これはこれまでの大学病院での経験で強く感じています。今後は開業という立場でより地域医療に近い状況で医療をスタートできるので、初めて精神医療にかかる方たちと接する事も多くなるだろうと感じています。
5年後という訳ではありませんが、一番目標にしたいのは医療の手で患者さん達を慢性化させることをできるだけ減らし、一定の確率で精神医療を卒業出来る患者さんの数を維持するということです。新たにこられた患者さん達がずっと通い続けるのではなく、良くなって治療の手を離れることができればより多くの人たちの役にたてると考えるからです。


⑧ 今後の日本の精神科医療について
SSRIという種類の抗うつ薬が市場に出てから「うつ病」と診断のつく患者さんの数が激増していることは多くの方がご存知と思います。では果たして、本当にこれだけ病気の人が世の中に増えてしまったのでしょうか?私は今の精神医療のあり方にやや危機感を抱いています。本当にその人が病気なのかを短い診察時間の中で見抜くことは本当に難しいことだと感じています。今回開業するにあたり、多職種のスタッフの方々が力になってくれることにすごく感謝しています。
最近特に感じているのは、多くの人の生活習慣や食生活が乱れ、これらが様々な身体的不調をきたしているという事実です。これらのことは実はあまり医学部では教えられない事なのです。医師だけでは見抜けないこともスタッフの力を合わせれば解決につながると考えています。そして患者さん達の生活が良くなるような医療を展開できればと願っています。


以上が白岩先生へのインタビュー内容です。

「人を見ずして病気をみる」、とても印象に残るフレーズですし、この一言に白岩先生の医師としての生き方があらわれていると感じました。
精神科に限らず、医学は症状→診断→治療となるのが普通ですし、それがもっとも重要な医師の仕事であると思います。しかし医学全般、特に精神科に関しては病気が治ってもその人の問題点はあまり変化しないことがあります。症状はなくなったけど、学校にはいけない、仕事はうまくできない、他者とのコミュニケーションはうまくとれない、生き生きとした生活にならない、など最初の主訴は何も変わらないことがあります。それは症状とはその人の困りごとの入り口に過ぎないからです。その奥にあるその「人」自体を診ることができなければ、その人が「自分らしく生きる」ことはできないだろうと思います。患者さんがこれまでどう生きてきたのかを知らなければ、今後どう生きていくのかを予測することはできず、そのためのアドバイスもすることができません。症状に対する治療は精神科臨床の一つの側面に過ぎないと思います。患者さんが自分らしい生き方を見つける手助けをすることが精神科のメインの仕事になります。白岩先生の人の役に立ちたいという動機からたまたま医師になったというエピソードは、精神科医として非常に重要な資質を持っいることにつながるではないかと思いました。
白岩先生のインタビューからは現在の日本の精神科医療における本質的な問題も考えさせられました。医師が病気を作り上げている事実はこの国に限らずグローバルでも共通の問題となっています。そしてその本質的な問題に対して先生なりの答えを探そうともがき、今できることの結果として開業を選択されたのだろうと思いました。
先生が院長をつとめる医療法人永朋会和光メンタルクリニック大阪中津の開業は7月1日を予定しているようです。開業が楽しみですね。