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臨床情報「ストレスと栄養について」

今日はストレスと栄養についてお話ししたいと思います。

一見関係ないように思えるストレスと栄養ですが実は密接に関係しています。

精神科ではストレス性の疾患は当然ですがストレス因子を取り除くことが治療になります。当たり前です。ですが、それがなかなか難しいからわざわざ患者さん方も受診されるわけで、それに対していわゆる普通のメンタルクリニックでは何をしているかといえば、話を聞いてそこに何かしらの”疾患を見つけ出し”、診断名をつけて医師も患者さんも病名が付いたことに安心してあとは薬を出して経過観察です。

ヘタをするとこの”疾患を見つけ出し”は医原性の疾患にもなりかねません。

悪いとは言いません、わたしも過去はそうでした。医師である以上、何かしらの病名をつけることは診断学上必要ですし、患者さんをそのまま帰すのではなく治療として薬を出すこともします。良かれと思えばこその判断でもあるわけです。

しかし、ストレスのように、医師の治療だけでは何ともならないような事柄に対してあまりにも無力なのもまた事実です。

しかし、栄養学を知っているとストレス疾患の患者さんが来たときにも対応が異なってきます。ニヤリ



ストレスがかかっている時に体に起こる反応として有名なのはストレスホルモン、いわゆるステロイドホルモンの分泌です。ステロイドホルモンは視床下部下垂体系という脳のホルモン経路からの指令を受けて、副腎という腎臓にくっついている小さな臓器から分泌されます。エストロゲンやアンドロゲンなどの性ホルモンも副腎から分泌されます。

ステロイドホルモンは全身で色々な役目を担っていますが、ストレスに対しても働いているので、適度な緊張状態は適度なステロイドホルモンの分泌で力を発揮するようになります。ドーピングなどがいい例です。

しかし、ストレスがあまりにも強いと逆にステロイドが出すぎて逆に体がついていかなくなります。ストレス反応が強まりすぎるのです。ステロイドには血糖を高める作用もあります。ステロイド糖尿病という病気があることは有名です。

血糖値が上がりすぎると今度はインスリンの過剰分泌を起こし、前回お話ししたインスリンスパイク状態になります。

そしてその反応として体は大量のビタミンB群や鉄を消費して何とか切り抜けようとするのです。

これが1日だけのストレスであればまだなんとかなりますが、何日も続くようなストレスであれば。それは当然精神的に調子を崩すのは火を見るよりも明らかです。えーん

以前のブログ「食事療法の考え方」で糖質制限についてお話しした時にビタミンと鉄が大事とお伝えしましたが、同様ですね。ビタミン、鉄が不足すると脳の機能は一気に落ちます。そして精神的にかなり不安定になります。



今回は更に踏み込んだお話しをします。

副腎についてです。ステロイドホルモンが強く出すぎる状況が続くとさすがに副腎も疲れてきます。それが副腎疲労という状況です。この言葉はなかなか聞き慣れないと思いますが、栄養学を語る上で重要な項目です。

糖尿病は血糖が上がりすぎてインスリンが疲弊して出にくくなる病気でしたが、副腎疲労はステロイドホルモンが出にくくなる病態です。ですので、些細なストレスにも疲れを感じやすくなります。

また、インスリンで下がった血糖値がステロイドで上がると言う反応が弱くなるため、低血糖を起こしやすくなります。

このため、副腎疲労に至る場合はむやみに糖質制限をすると逆に病状を悪化させるおそれもあるのです。更に副腎疲労を来すほどの状態ですと胃の消化機能も落ちていることが多いので、なかなか食欲も出ないことが多くなります。

ですので、緩やかな糖質制限とともに、プロテインではなくアミノ酸での栄養補給、ビタミン、鉄の投与が必要になります。



栄養療法、なかなか奥が深いですねぇ〜

栄養学を知っていると、このように患者さんの治療にお役に立つ幅も広がるようになります。



当院では栄養解析を行っております。副腎疲労の有無、足りない栄養素、必要な栄養配分が栄養解析でわかります。また、医療用サプリメントのアドバイス、管理栄養士による食事指導なども行っております。

記事:医療法人永朋会 和光メンタルクリニック大阪中津
院長 白岩恭一