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臨床情報 「躁うつ病のうつ病エピソードに対するTMS治療の有効性について」

躁うつ病のうつ病エピソードに対するTMS治療の有効性について

躁うつ病の治療は一般的には薬物療法がおこなわれることが多いですが、大うつ病性障害との鑑別、他の疾患の前駆症状として認められる、併存疾患の見極め、など診断一つとっても難しいことが多いと思われます。診断が間違っていたり、併存疾患があると単純に気分安定薬を使用しているだけでは症状が改善しない可能性があります。また診断が確定したとしても薬物治療へ反応しない場合もあり治療が長期化してしまい、日常生活にも大きく支障がでるケースが少なからず認められます。さらに気分安定薬は副作用にも注意する必要があり、副作用がでるために使用できないということも臨床上よく認められます。
当院ではそのような方に対しTMS治療を行い、うつ相に対し有効性を認めたケースを多く経験しています。薬剤を併用しているケースもありましたが、TMS治療を行いうつ症状が改善してから薬剤を減量、もしくは中止までもっていくことができたこともあります。特に気分安定薬の一部をやめることができなくても、SSRIなどの抗うつ薬を中止することができれば躁状態になるリスクを減らすことができますし、抗うつ薬による副作用をなくすことができることも大きなメリットがあると思います。
以下にTMSの海外での躁うつ病に対し有効性を示した論文を紹介します。躁うつ病のうつ相に対する治療選択肢が増えることは治療に難渋している方によっては非常に意味のあることだと思っています。ご参考にしてください。

医療法人永朋会 理事長 加藤晃司

―――――以下論文引用――――――――
双極性障害は躁病/軽躁病のエピソードを特徴とするが、鬱病エピソードはこの障害に罹患している患者にとって最も大きな負担をかける。残念なことに、双極性鬱病に対する証明された治療法はほとんどなく、そして多くの患者はこれらの治療法に反応しないか、またはこれらの治療法に耐えることが困難である。したがって、新規で安全かつ効果的な治療法が緊急に必要とされている。
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)などの神経調節アプローチは、大うつ病性障害患者のうつ病エピソードの治療における無作為化二重盲検模擬対照試験(RCT)に有効であることが実証されています。しかしながら、rTMSの抗うつ効果が双極性鬱病に及ぶかどうかは不明である。大うつ病におけるrTMSの多くのRCTには、双極性うつ病の患者が含まれています。したがって、本研究の目的は、双極性鬱病におけるrTMSの臨床的有効性および安全性に関するデータを統合し、rTMS文献を系統的にレビューして無作為化試験に含まれる双極性患者を同定することである。
本研究の結果は、rTMSが双極性鬱病の治療に関してプラセボrTMSよりも著しく優れているように見えることを示している。治療に対する反応は、2週間の治療後(10セッション)に最も顕著であり、さらに2週間の治療後にそれ以上の改善は見られなかった。本研究では、双極性鬱病患者における実際の治療とプラセボ治療の効果を区別することができたが、患者数が少ないため、これらの結果を確認するためにさらなる研究が必要である。


Clinical efficacy and safety of repetitive transcranial magnetic stimulation in acute bipolar depression
Alexander McGirr, er al

Though bipolar disorder is characterized by episodes of mania/hypomania, depressive episodes pose the most burden for patients suffering from the disorder. Regrettably, few proven treatments exist for bipolar depression, and many patients either do not respond to, or have difficulty tolerating these treatments. Hence, novel, safe and effective treatments are urgently needed.
The neuromodulatory approaches, such as repetitive transcranial magnetic stimulation (rTMS), have been demonstrated to be efficacious in randomized double-blind sham-controlled trials (RCTs) in treating depressive episodes in patients with major depressive disorder. However, it is unclear whether the antidepressant efficacy of rTMS extends to bipolar depression. Many RCTs of rTMS in major depression have included patients with bipolar depression. Therefore, our objective was to systematically review the rTMS literature to identify bipolar patients included in randomized trials in order to synthesize the data on clinical efficacy and safety of rTMS in bipolar depression. We registered the literature review protocol with PR
The results of this study show that real rTMS appears to be significantly superior to sham rTMS for the treatment of bipolar depression. Response to treatment was most marked after 2 weeks of treatment (10 sessions), with no further improvement following an additional 2 weeks of treatment. This study was able to distinguish between the effect of real versus sham treatment in patients with bipolar depression, however, due to the small number of patients, further initiatives are needed in order to confirm these results.