臨床情報 「抗うつ薬のやめ時はいつか」
『抗うつ薬の止めどきはいつか』
ということは、精神科診療を日々おこなっているものにとっても非常に難しい点です。
毎日、多くのうつ病の患者さんの治療をおこなっているのに、明言ができない歯痒さがあります。
単極性うつ病は自然経過においては、
寛解後1年以内に40%、15年以内に85%の再発を認めると言われており、
非常に長期的な視点が必要であると考えられます。
一方で臨床研究も治療上の指針においても、長期的な薬物療法や維持療法のコンセンサスは十分ではありません。
(急性期治療についてのデータや指針は豊富なことに比較すると乏しいです。)
寛解後、約6ヶ月の持続療法が再燃・再発予防のために推奨されることは周知されておりますが、悩ましいのは、その後の維持療法の展開についてです。
まず、長期薬物連用のメリットは?
長期間における抗うつ薬内服の再発予防効果を実証する報告は十分ではありません。
イフェクサー(ベンラファキシン)、ジェイゾロフト(セルトラりン)などでは、急性期・持続療法に良好に反応した患者さんにおいて、維持療法を2年以上おこなった方が再発率が優位に低い等の結果があります。
では、長期薬物連用に伴うデメリットは?
まず、高齢患者さんは再発・再燃率が高いと言われていますが、
長期の抗うつ薬治療において、1年以内の再発は抑制に効果があるといわれていますが、2,3年後の再発予防効果はメリットが乏しいとの指摘があります。
また、複数の気分エピソードを繰り返す患者さんでは、再発を繰り返すたびに抗うつ薬の再発予防効果への抵抗性が形成される可能性が挙げられております。
名駅さこうメンタルクリニック院長
丹羽亮平