臨床情報「成人期の注意欠如多動性障害(ADHD)の評価スケール CAARS日本語版)」
今回は成人期の注意欠如多動性障害(ADHD)の評価スケール、CAARS日本語版(Conners' Adult ADHD Rating Scales)をご紹介します。
CAARSはコナーズらによって作成された記入式の評価尺度で、項目の内容はDSM-IVの診断基準に基づいています。
CAARSは成人ADHDの症状を多側面から測定でき、欧米で最も多く使用されている評価尺度です。保険適応となっている検査ですので、専門機関にて行う必要があります。
ADHDは子どもの疾患と考えられていましたが、成人になってもその症状は残存することがわかってきました。
ADHDの症状のため職場での上司や部下との対人関係の問題、ささいなミスやトラブル、複数の仕事を同時に進めることの困難、スケジュール管理の苦手さ、など多くの問題を引きおこす原因となっている可能性があります。
複数の情報を処理するのが苦手なので、車の運転などでも苦手さがでることがあります。また物事への優先順をつけるのも苦手なこともあり、その場合、片付けられない、整理できない、複数の仕事を全部やろうとして最重要な仕事が終わっていない、自分の中で優先順位の低いものはすぐに忘れてしまう、複数での会話(会議など)だと話についていけなくなる、二つ以上のことを同時に作業できない、ということも起きます。これらの多くは学生の時は失敗してもとくに大きな問題にはなりませんが、仕事をしはじめると少しのミスも許されないケースがでてくるため、もともとあったADHD症状が表面化してくることとなることが多いのです。
しかし本人にはその症状が、ADHDの症状として自覚できていない場合も多いです。それは本人にとってはその特性は子どもの時からあるものであり、仕事をするようになってから表面化してもなかなか気づきにくいものです。
ADHDという疾患自体の認知もまだまだ広がっていません。すべての症状は治療で治るわけではありません。しかしいま目の前で起きている問題の一部分は解決することができるかもしれません。
自分が困っていることに当てはまっていたり、ほかの人から同様のことを指摘されて少し気になっている場合には一度検査を行うことも一つの方法です。
専門機関ではこの検査も含め、子どもから大人までのADHDの検査、診断面接、治療まで行うことができます。上記のようなことでお悩みの場合は相談してください。
今目の前で起きている問題が何からきているのか、その解決のお手伝いをすることができるかもしれません。
記事作成:加藤晃司(医療法人永朋会)