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臨床情報「発達障害(ASD,ADHD)の方の仕事(就労)での困難さ、そして就労支援について」

今回は、発達障害(ASD,ADHD)の方の仕事(就労)での困難さ、そして就労支援についてがテーマです。

発達障害の方の就労は社会的な自立に向けての一つの目標になります。
しかし就労に向けての困難さは、その疾患特性から発生するものが存在します。

今回は発達障害、特に成人の広汎性発達障害(アスペルガー障害、PDDNOD)、注意欠如多動性障害(ADHD)の方の就労での問題、困難さについて考えてみます。

<就労での問題>
・職業選択
 アスペルガー障害の人は物事に強いこだわりを持つため、その興味の対象がそのまま職業に結びつくとこれほど強いことはない。学者や研究者になれば優秀なことも多く、多少の対人関係のハンディキャップを埋めることができる。
 しかし職業につながるような強い興味がないことの方が多い。この場合こだわりは裏目にでる。
 
①こだわりのために先に仕事が進まず、仕事がどんどん遅れる
②ちょっとした仕事内容の変更にも臨機応変に対応できない

→職場の環境調節が必要、それでもだめなら職業自体を変える
就労において大事なのは、対人関係障害と強いこだわりというハンディキャップを職業選択の段階で十分に考慮しておくこと。
アスペルガー障害の人は社会参加が苦手だが、社会参加が嫌いなわけではない。適切な就労で精神状態も安定する。


・高機能広汎性発達障害と就労困難
場面に応じた言葉遣い
上司の指示を字義通りに理解
正論を押し通す
視覚と運動の協応
並列作業の困難
作業環境の騒音
同一の視覚パターンの反復
臨機応変の対応の要求
就労時間が長い
休憩の頻度が少ない
実現不能なノルマ設定

→能力評価や過去の失敗のパターンの分析をもとに適切な就労場所、職業内容の選択をする必要がある。

・成人の注意欠如多動性障害(ADHD)の場合の就労困難の原因
物事の順番がつけられない、整理整頓困難、時間の管理困難、
忘れっぽさ、ミスの多さ、複数の案件を覚えておくことが困難、
物事を予定通り始めたり終了できない、言葉のまとまらなさ、
表現が下手、計画変更が困難、課題完遂不能、
何をしようとしていたかを忘れてしまう、新しいものが好き、
すぐに飽きてしまう、アイデアが豊富だが実行困難、本がすべて読みかけ
頻繁な転職
長く単調な仕事に注意を集中し続けることが困難
些細な妨害が入ったり,新しい刺激があると重要な課題から逸れてします
交通事故や負傷することが多い


つまり疾患特性を理解した上で、あとは一人一人の特徴に合わせた職業選択や仕事上での工夫が必要である。

就労支援は本人、家族だけでは困難なことがあります。
病院や支援センターなどに相談するのも一つの方法です。
また上に書いたような困難さがあるが、これまで病院にはかかったことがない場合は
一度受診してみるのもいいでしょう。
もし診断がつくような場合には、自分の特性を知ることで、自分に適した環境を選択したり、
あまりに困難な状況は回避したり、より生きやすい方法が見つかるかもしれません。
また症状によっては治療可能なものもあり、日常生活の困難さの一部分が改善される可能性
もあります。


記事作成:加藤 晃司(医療法人永朋会)