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臨床情報「経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation :TMS)とは」

経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation :TMS)についてのご紹介です。


うつ病の治療には、薬物療法、精神療法などがありますが、欧米では経頭蓋磁気刺激(TMS)が認可されています。
TMSは非侵襲的に大脳皮質を刺激する方法であり、規則的な刺激を連続して行うものをrTMS(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation: 反復頭蓋磁気刺激)といいます。

磁気を用いて脳の特定部分を活性化する方法により、薬に認められるような副作用がなく、安全性と有効性のバランスのとれた化学的根拠のある治療です。

<このような方におすすめします>
うつがなかなか治らない。
薬には抵抗感がある。
薬や他の治療が効かない、あるいは不十分。
薬で副作用が出やすい。
うつのメカニズムに即した治療を望む。

<対象症状>
抑うつ気分
意欲低下
興味の喪失
不安
不眠
頭痛、腹痛、腰痛など身体的な原因の分からない体の痛み
倦怠感
集中力低下
日中の眠気、だるさ
など

<うつ病の背景>
うつ病では脳の活動が低下されていることが指摘されており、特に左前頭葉の活動低下が認められております。
(1)器質的な原因の一つとして考えられていること
・背外側前頭前夜、前部帯状回、前頭葉眼窩野、脳梁膝下部、偏桃体などの領域の異常が指摘されている
・左側優位の背外側前頭前野の機能低下(相対的な右側の機能亢進)

(2)rTMSの治療として行われていること
→左背外側前頭前野への高頻度刺激
うつ病症状の改善と相関のあった脳血流が増加
→右背外側前頭前野への低頻度刺激
うつ病症状の改善と相関のあった脳血流の減少

<治療の有効性>
左背外側前頭前野への高頻度刺激、右背外側前頭前野への低頻度刺激のどちらの方法も複数の二重盲検ランダム化比較試験によって有効性が認めれておりうつ病治療の選択肢の一つとして考えられる。rTMSは抗うつ薬の治療と比較して安全性や忍容性に優れています。


記事作成:加藤 晃司(医療法人永朋会)