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臨床情報「「子どものパニック障害」①症状と診断

今日は「子どものパニック障害」①症状と診断についてです。


パニック障害(Panic Disorder: PD)は重篤な不安の表出の一つです。子どものPDは学業上の困難など,心理・社会的に大きな問題を伴い,さらに他の精神障害(他の不安障害,大うつ病性障害,物質乱用,など)を併存するリスクを増加させるといわれています。PDは通常,成人期早期で発症しますが,PDと子どもの過剰な不安や分離不安との関連性が指摘されており,さらに疫学研究によってPDは小児・思春期にも出現する可能性があることが示されています。しかし一方では,子どものPDはまれであるか,もしくは存在しないとの報告があり,子どものPDの臨床的な特徴や成人のPDとの関係についてはほとんど知られていないのが現状です。

Ⅱ.DSM-Ⅳ-TRにおけるPD
DSM-Ⅳ-TRでは,パニック発作は13の身体症状または認知症状のうち少なくとも4つを伴い,現実の危機は存在しないにもかかわらず,明確に他と区別することができる強い恐怖や不快感を示す期間が存在する,と定義されています。また,パニック発作は突然起こり,急速に(通常は10分以内)頂点に達する。症状は身体的もしくは認知的な特質をもち,①動悸,心悸亢進,または心拍数の増加,②発汗,③身震いまたは震え,④息切れ感または息苦しさ,⑤窒息感,⑥胸痛または胸部の不快感,⑦嘔気または腹部の不快感,⑧めまい感,ふらつく感じ,頭が軽くなる感じ,または気が遠くなる感じ,⑨現実感消失または離人症状,⑩コントロールを失うことに対する,または気が狂うことに対する恐怖,⑪死ぬことに対する恐怖,⑫異常感覚,⑬冷感または無感,を含む。パニック発作には3つの特徴的な型があり,予期しない(きっかけのない),状況依存性(きっかけのある),そして状況準備性,である。そして,予期しないパニック発作が反復しておこり,それに続いて,少なくとも1か月の間,次のパニック発作が起こるのではないかという心配が持続する場合にはパニック障害の診断基準を満たす。また,PDは広場恐怖と関連する頻度が高く,PDには二つの型があり,広場恐怖を伴わないPDと,広場恐怖を伴うPD,に分けられています。
広場恐怖とは逃げるに逃げられない(または逃げたら恥をかく)ような場所や状況にいることについての不安であり,例えば家で1人になる,家の外で1人になる,人混みの中に入る,自動車,バス,または飛行機で旅行する,橋を渡る,またはエレベーターに乗る,などである。このようなさまざまな状況に対する広範な回避がみられます。これらはパニック発作やパニック様発作が生じた場合に助けを得ることができないかもしれない場所や状況が対象になっています。パニック発作に対する不安や,広場恐怖による特定の場所や状況の回避によりかなりの苦痛を伴い,社会,仕事,学業での機能に著しい障害を与えます。


記事作成:加藤 晃司(医療法人 永朋会)