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臨床情報「子どものパニック障害」②診断について

子どものパニック障害(PD)の診断について

まず,子どものPDを診断するための最初のステップはパニック発作を認めることであり,同時に他の疾患を除外しなくてはいけません。PDには他の不安障害や気分障害が合併することが多く,それらの疾患がパニック発作を隠してしまうことがあります。また,構造化面接を行ったり,評価スケールを使用したりすることで不安を正確に評価することができます。たとえば,構造化面接ではSchedule for Affective Disorders and Schizo-phrenia for School-Age Children(Kiddie-SADS),Diagnosic Interview for Children and Adolescents(DICA)31),などがあり,評価スケールではHamilton Anxiety Rating Scaleがあります。次に,PDを診断するのに重要なことは不安障害や気分障害が存在することを見つけることです。たとえば,他の不安障害 (特に分離不安障害や社会不安障害)や気分障害 (特に大うつ病性障害)はPDと同時に存在する頻度が高いため,これらの疾患を見つけたら同時にPDを疑う必要があります。また,パニック発作が起こる状況はパニック発作を起こす他の不安障害と鑑別する上で重要な要素です。パニック発作を伴う疾患としては特定の恐怖症や社会恐怖があげられます。さらに,パニック様の発作は身体疾患でも起こる可能性があり鑑別が重要です。たとえば,甲状腺機能低下症,副甲状腺機能亢進症,けいれん性疾患,前庭機能不全,心疾患(不整脈,上室性頻脈など),褐色細胞腫,あるいは中枢神経刺激薬(アンフェタミン,コカイン,カフェイン,大麻)の中毒や中枢神経抑制薬(アルコール,バルビツール酸)の離脱による不安障害,などがあります。

また,PDは同様の臨床的特徴をもつ他の病理学的状況と区別しなければなりません。たとえば,情動症状を伴うてんかん発作(側頭葉,前頭葉てんかん)や片頭痛のような神経疾患,心疾患(PDは僧帽弁逸脱症の合併が多い),胃腸障害(嘔気,腹痛,腹部不快感),低血糖発作,呼吸器疾患(間欠性の気管支けいれん),などがあげられます。また,過換気症候群と診断された子どもの大部分がPDの診断基準を満たす可能性があります。


記事作成:加藤 晃司(医療法人 永朋会)