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「なんとなくイライラする」、はかなり鑑別が難しい

「なんとなくイライラする」、はかなり鑑別が難しい


なんとなくイライラする、を主訴、もしくは、結果として生じている、もしくは本人が主訴だと思っていないけどもっともそれがじゃましている場合、など、結構色んな場面に登場してきます。

例えば、
なんとなくイライラする、がその人の気質のベースにあると、対人関係でもトラブルになりやすくなるのは想像できると思います。他人から見たらどちらでもいいようなことでも、本人がもしイライラしてしまったとしたら、それを抑えるのに我慢する必要がでてきます。

我慢する、これ結構重要です。

なんでもない日常の中で、人には気づかれることはなく、自分の中のイライラを無理やり抑え込む
これが何年も、下手したら子供の時からずっと、なんてこともありますので、そうなると結構調子悪くなります。

もともと、生来の気質として、イライラしやすい(精神科的には易刺激性、衝動性という表現になるかもしれません)があると、養育者(主には母親)との関係においても、良好な関係が築きにくくなることがあります。小さいときは、かんしゃく、がある状態です。単純にかんしゃくが表にでていればいいですが、逆に気が利く子だと、これを小さい時からコントロールすることができます。このパターンの方が、大きくなってから問題がでてくることがあります。それは子どもの時に手がかかる、よりも、大人になってからでてきた何かの方が、病態としては深いことが多いかなと思います。

我慢しなければいけないことが続けば、少しずつ自分だけなんでこうなんだろう、と気にすることは多くなり、おのずと自己評価は下がっていきます。
その結果として、なんとなく元気がない、ぼーとする、人目が気になる、初対面が苦手、引っ込み思案、コミュニケーションがとれない、などなど、色々な形で外側の問題点としてでてくることがあります。

病院にくるときは、その外側の問題点を主訴に来ることの方が多いかなと思います。
気持ちが落ち込んでやる気がでない、がメインの症状でも、このような背景があればうつ症状の治療をしてもよくならない可能性あります。

単純に症状一つをターゲットにするなら「易刺激性」を狙った方がいいですし、過去からの連毒性の中で現在の問題が発生しているなら、過去を紐解く作業が必要になります。そうなると結構治療は長くなりますよ、ということを本人も理解する必要があります。

外側に見えているものだけ、本人が自覚しているものだけが、問題点とは限らないのが、精神科の難しいところです。

そして本人の本質的な部分と、困っている部分、完全に分けることができないことばかりですから、落としどころを見つける作業も必要になります。

完全に心地いい状態は逆に不自然です。

このくらいが今は自分らしい、と思えるくらいになれるといいんじゃないかと思います。

医療法人永朋会 理事長
加藤晃司