境界性パーソナリティー障害と発達障害の合併について
境界性パーソナリティー障害と発達障害の合併について
境界性パーソナリティ障害(BPD)の生育歴は、不認証環境があるといわれています。
不認証環境+生来の特性(易刺激性)が重なって発症するというのが、有力な仮説となっています。
不認証環境、つまり、適切に認証されてこなかった生育歴、というものを、診察では確認していくことになります。
成人でも思春期でも本人から生育歴の振り返りは行いますが、可能であれば養育者、主に母親からの聞き取りが本来は必要です。
ですが、大人になってから病院にくる方の多くは、母親との関係が良くないことが多く、母親から直接生育歴を聞くことができないことがあります。
未成年の場合は、保護者としてついてくる場合が多いのと、早い年齢で関わることができれば、関係性もこじれすぎる前ということもあります。
ここでちゃんと認めてもらえなかった、という感覚は、いったい誰のものなのか、ということがでてきます。
本人が「認めてもらえなかった、ほめてもらえなかった」と語ったとしても、それが実際にどうだったかというのは過去を直接確認することはできません。
しかし生育歴には、ある程度、連続性というものがあります。養育者が途中でかわない限り、ある程度、本人との関係は、現在に至るまで連続するものがある、と思っています。
時に、本人から振り返る生育歴、母親から振り返る生育歴、が異なる場合があります。
そんなときは、今、自分の目の前で展開されている、本人と、本人と母親との関係、にフォーカスします。
もちろん父親など、他の家族からの情報もそこには加えることもあります。
異なる生育歴が語られる、一つのケースとして、本人に広汎性発達障害(PDD)が併存している場合があります。
PDDの中核障害は、対人相互性の障害、つまり、他者の心の理解の障害、です。
これがあると、状況理解の苦手さもともないます。空気を読むのがにがて、というものです。
極点にいえば、総合的に状況を判断すれば母親は本人を愛している、認証していたとしても、それを本人がくみとることができなければ、それは本人からみたら、不認証環境になる、ということです。
PDDが合併というか、この場合、PDDが主病態で、疑似BPDのようなものが併存している、というややこしい状況になります。
しかし大事なのは、PDDが主病態だということです。PDDのせいで、不認証環境みたいなものが存在してしまっているいるからです。
そしてさらに難しいのが、母親がほんとうは愛していたんじゃないか、というのが、対人相互性の障害のせいで、感覚的には理解することができないこともあるからです。
この場合、自分がPDDの特性がある、ということを最初に理解させる必要があります。
次回に続く
医療法人永朋会 理事長
加藤 晃司