うつ病に対するエクソソームの有効性について
慢性炎症とうつ病の関連について
当法人では、うつ病の治療選肢の一つとして、TMS治療を導入しています。
それは薬の使用に抵抗のある方、薬は副作用のせいで使えなかった方、薬を使ったが効果がなかった方、に対して内服治療、心理療法、以外の治療法が少しでもあった方がいい、と考えたからです。
ビジョントレーニング、VRを使ったトレーニング、栄養療法、などを導入したのも同じ理由からです。
うつ病だけに限ったことではないですが、一つの例として、うつ病の原因、標準治療について考えてみます。
うつ病の原因仮説はいくつも考えられています。精神科ではうつ病の保険適応治療薬となっていることから、セロトニン、ノルアドレナリンの関連するモノアミン仮説がよく知られています。
しかしすべてのうつ病の人に、モノアミンを調整する抗うつ薬が有効かといえばそうではありません。またセロトン、ノルアドレナリンに影響を与える抗うつ薬は、副作用も必ずといっていいほど発生します。
うつ症状は、抑うつ気分、意欲の低下、興味の喪失、集中力低下、記憶力低下、倦怠感、焦燥、不安、不眠、などがメインの症状ですが、これらは脳機能の不具合がおきれば、当然起こりうることであり、うつ病という単一疾患が原因であるとは限りません。
TMS治療も、脳機能への直接的なアプローチという意味では、モノアミン仮説とは違うアプローチといえます。
その他の原因仮説として、慢性炎症がうつ病の原因の一つとなっている可能性、もその中の一つと考えられています。
慢性炎症とうつ病の関連性については、近年多くの研究が行われています。一部の研究では、慢性炎症がうつ病のリスクを高める可能性が指摘されています。また、炎症マーカー(例:C反応性タンパク質、インターロイキン-6)のレベルが高いと、うつ病の症状がより重い傾向にあるとも報告されています。慢性炎症は神経伝達物質のバランスを崩す、神経可塑性を低下させる、ストレス応答を変化させるなど、多くの機構でうつ病に影響を与えるとも考えられています。
慢性炎症の治療とうつ病の改善
慢性炎症をターゲットにした治療がうつ病の症状を改善する可能性がありますが、その証拠はまだ初期段階です。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗サイトカイン療法(例:抗TNFα療法)が一部のうつ病患者に有益な効果を示した研究もありますが、これらのアプローチが広く推奨されるまでには、より広範な臨床試験と研究が必要です。
慢性炎症というのを一つのキーワードとすると、エクソソーム治療も抗炎症作用があることから、うつ病に対しても有効な可能性があるのではないかと考えています。
エクソソームとうつ病
エクソソームは、慢性炎症やうつ病に対する新しい治療法として注目を集めています。エクソソームは細胞間の通信を担い、炎症や神経可塑性、ストレス反応などに影響を与える可能性があります。一部の前臨床研究では、エクソソームが神経保護効果を持つ、炎症反応を調節するなどの有望な結果が報告されています。
以上のように、慢性炎症とうつ病の関連性は高い可能性がありますが、慢性炎症を治療することでうつ病が確実に改善するわけではない可能性もあります。
これは一つのアプローチにすぎませんが、標準治療で効果がない、もしくは抗うつ薬は使いたくない、場合、やはり最初にのべたように、治療選択肢は一つでも多い方がいいと考えています。
私は、エクソソーム治療は、うつ症状を改善させる可能性があるのではないかと考えています。実際、アルツハイマー型認知症に対する臨床試験は行われてきており、有効性を報告する論文もでてきています。脳機能自体を改善する可能性があるならば、慢性炎症というとらえ方をしなくても、神経回路や神経細胞の機能の改善をする作用があるエクソソームは、いくつかの理由で、うつ症状を改善する可能性あります。もしくはうつ症状だけでなく、中枢神経の不具合から生じている精神症状に関しては、どの症状であっても、改善する可能性があるのではないかと思っています。
しかし一つずつ検証していく可能性があります。
最初はうつ症状に対するエクソソームの有効性について、実臨床でのデータを通じて検証していこうと考えています。
医療法人永朋会 理事長
加藤晃司
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