自分らしく生きるって難しい
自分らしく生きるって難しい
精神科の外来は、昔に比べると、症状としてはそれほど重くない方もたくさんくるようになったと思います。
それは子どもも、大人も同じような印象です。
子どもは相談しにいく場所が少ないので、しょうがないところもあるかなと思いますが、それでも増えたなと思います。
なんとなく、大人モデルとなる人に出会うきっかけが少なくなったからかな、と思っています。
そういう大人になりたい、こういう人になりたい、と思わせてくれた人と出会うのって結構今は大変なんでしょう。
家族も核家族多いですし、そもそも離婚する方もほんとうに多くなりました。地域の人とのつながりや学校の先生とのつながりも、昔よりは希薄になったように感じます。
無意識に、こういう人になりたいというイメージは、入っているものです。思い出せないかもしれませんが、それはある人にはあります。
すべてを真似するわけではないですが、なんらかの指標、軸みたいになっていると、自分の今の立ち位置、理想との距離感、とかも測定しやすいはずです。
その方が、ちょっと地に足がついた感じになるような気がします。
大人モデルがいないだけでなく、養育者と子どものポジションが逆転していることさえあります。母子逆転といいます。
しっかりした子にはなりますが、愛着の形成という意味ではいびつさが残りますから、大人になってパートナーとかができてくると、つまり精神的な距離が近い相手がでてきたときに、その関係性で問題がでてしまうこともあります。
大人モデル不在だと、今の自分があっているのかどうか分からなず、漠然とした不安というものがつきまとうこともあります。
なんかよく分からないけど、今の自分、未来の自分への不安がある、といった感じです。
もちろん不安はあって当たり前なのですが、これでいいんだ、という感覚や、今の自分を肯定されている感覚が、あまりない状態だと、やはり曖昧な不安が常にあるという不安定な感じになりがちです。
大人モデル不在の場合には、担当医や、担当カウンセラーがその役割をすることもありますが、これにはある程度その人の人間力みたいなものが必要となります。いろんなことに対する経験値があまりないと、大人モデルとして存在してあげれるパターンが少なるだろうなと思います。
医療法人永朋会 理事長
加藤晃司
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