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投影同一視について、少し簡単に考えてみよう

投影同一視について、少し簡単に考えてみよう


精神分析の単語に、投影同一視、という言葉があります。
言葉だけ聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、日常的に実は発生している現象です。
それをラベリングして、名前をつけたクラインは天才だと思いますが、言われてみればそんなに難しいことではありません。

といいつつ、やはり定義は重要ですので、まずは難しく書きますと

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投影同一視(Projective Identification)は、精神分析理論、特に対象関係理論において使用される用語です。この概念は当初、メラニー・クラインによって導入され、その後発展してきました。投影同一視は個人が自身の感情、思考、特性を別の人に投影し、その人がその投影された感情や特性を実際に持っているかのように感じる、あるいは振る舞うようになるプロセスを指します。

投影同一視のプロセス
投影: 個人Aが感じている否定的な感情や不快な特性を自覚するのが難しいと感じる。
同一視: 個人Bが、個人Aから投影された感情や特性を自らのものとして引き受け、それに応じて振る舞う。
フィードバック: 個人Aは個人Bの反応を見て、自分の感じていた感情や特性が正当化されたと感じる。
投影同一視の例
たとえば、ある人が自分自身を攻撃的だと感じているが、それを受け入れることができない状況を考えてみましょう。その人は、自分の攻撃性を他の人に投影し、その人が攻撃的であるかのように感じ始めます。投影を受けた人は、その攻撃性を内面化し、実際に攻撃的に振る舞い始めるかもしれません。このプロセスを通じて、攻撃的であるという特性は第二者に「移動」し、投影した人は自分の攻撃性から距離を置くことができるようになります。

投影同一視の影響
投影同一視は人間関係において複雑な影響を及ぼすことがあります。それはしばしばコミュニケーションの混乱を引き起こし、誤解や紛争の原因となります。一方で、治療の文脈では、クライエントが治療者に対して投影同一視を行い、それがクライエントの内面の動きを理解する手がかりとなることがあります。

投影同一視は人間関係のダイナミクスを理解するための重要な概念であり、自己認識と他者との関係性の理解を深めるために用いられることがあります。
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となります。

ちょっとダラダラと書いていますが、読むと、なんとなく分かっていただけると思います。

自分で受け入れられていない、もしくは拒否しているから無意識化に入ってしまっている自分で自分の嫌な部分、誰しもあると思います。私にも当然あります。
しかしもっとも自分が嫌だと思っている部分は、なかなか意識することができないものです。それは自分で嫌だと思っているから、なるべく見たくないからです。
人間というのは、あまりにダメージが大きい情報は、脳が自動的に遮断したり、心が無意識に無視しようとします。ある種の防衛機能ですよね。

ですが、人生の大事な場面で、自分のもっとも嫌だと思っている部分を受け入れ、乗り切らないといけないこと、もほんとにあります。
そういう時に、この投影同一視を、セラピストと、クライアントの間で、ある種人工的に発生させる、ということをします。

なんでもない他人に自分の感情や思いを投影しても、それが投影されていることにも気が付かないかもしれませんし、それをこちらには教えてくれません。

しかしセラピストであれば自分の精神と体をつかって、投影同一視を感じとれる可能性はあります。もちろん絶対ではないです。
ですが、精神分析的な治療は、フロイト以降、そういう治療をやりつづけていて、現在まで生き残っています。
特定の二人の間、その時間、その空間の中でしか発生していないことを証明するのは難しいですが、実際に体験としてはあるのです。やれば、わかる、としか言えません。

人の感情や思いは、人から人に移動する、のは間違いなくあると思います。
怒り、悲しみ、幸福、苦痛、恨み、あらゆる感情は移動します。

そう考えた方が説明できること、結構あると思います。

これは小さな子どもでももちろん発生するので、プライセラピーとかは精神分析的な手法を利用して治療を展開しています。


まとめ

今回は、投影同一視について解説しました。

言葉としては難しいですが、結構どんな人にも当てはまることだと思います。

大事なのは、人の感情、思考、思いは、それが科学的に測定できなくても、人と人の間を移動していくものである、と考えた方が分かりやすいことがたくさんあるということです。

人は自分自身を知るために、他人にその影を投影するのです。
そう思って他の人と会っていると、今まで見えてこなかったものが、見えるようになることがあります。
ぜひ参考にしてください。

医療法人永朋会  理事長
加藤晃司
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