なんとなく怖い感じがする、というのは慎重にみていかなければいけない症状の一つ、について名古屋の児童精神科医が解説。
なんとなく怖い感じがする、というのは慎重にみていかなければいけない症状の一つ、について名古屋の児童精神科医が解説。
こんにちは、名古屋市千種区、児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。
今回は、なんとなく怖い感じがする、というのは慎重にみていかなければいけない症状の一つ、について解説します。
「なんとなく怖い感じがする」
このような主訴をきくだけだと、大したことがないように思えるかもしれませんが、こういう、なんだかよくわからない、理由はないんんだけど、不安というよりも恐怖に近い感覚がする、というのは要注意な所見です。
漠然とした恐怖感
と表現したらいいのでしょうか。漠然とした不安感よりも恐怖感に近いと思います。
この理由なき恐怖感は、自我漏洩症状のはじまりの時に認められる所見です
自我漏洩症状とは何かといいますと、
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統合失調症の自我障害(self-disorder)は、精神医学および精神病理学の分野で議論されている概念の一つで、患者が自分自身や自己認識に関する混乱や障害を経験するとされています。統合失調症は、感情、思考、認知、認識、自己認識などの異常な体験を伴う重度の精神障害であり、自我障害はその中で一部の患者に関連付けられています。
以下に、統合失調症の自我障害に関する詳細な情報を提供します:
自己認識の障害: 自我障害は、患者が自己認識に関する問題を経験する症状です。これは、自分自身を正確に把握できない、自己意識が混乱している、あるいは自分の身体や思考が他の存在と混同されることがあるといった症状を指します。
自己の単位感の喪失: 自己障害に関連する症状の一部として、患者が自分自身を単位として感じられない場合があります。つまり、自分の身体や思考が分裂しているか、分離しているように感じることがあります。
境界の不明確性: 自己障害は、自己と他者、内と外、現実と幻想の間に境界が不明確になることを含むことがあります。患者がこれらの境界を区別できないことがあり、現実感覚や社会的な相互作用に影響を及ぼすことがあります。
自己認識の変化: 自己障害は、時間と共に自己認識が変化することも特徴とされています。患者は、自分自身や自己アイデンティティに対する不安定な認識を持つことがあり、これが統合失調症の症状の一部と見なされています。
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簡単に言えば、自我が丸い球みたいになっているとすると、境界である外側の部分に少し穴があいているイメージでしょうか。
そうすると、外の外界と自我がつながってしまい、自分の考えが外にもれたり、他人の考えが中に入ってきたりする、ようになってしまいます。
その最初の段階、穴があいているけど、限りなく小さい時は、なんか急に怖くなったな、と感じるのだと思います。
外側の世界から自我を守ってくれていた壁に穴があくわけですから、悪意や恐怖が中に入ってきそうな感じが、漠然とした恐怖感につながるのでしょう。
というわけで、「なんとなく怖い感じがする」と言われると、統合失調症ないしは、そのくらい病態水準が重たい状況の最初の状態を見ている可能性があるなと思いながら、かなり慎重に経過をみていくことになります。
ちなみに、自閉性スペクトラム障害、アスペルガー障害、広汎性発達障害などの疾患がベースにある場合は、自我漏洩症状はでにくい、典型的な経過をたどらないこともあるので、ここは注意が必要です。
まとめ
今回は、なんとなく怖い感じがする、というのは慎重にみていかなければいけない症状の一つ、について解説しました。
自我漏洩症状の可能性があるため、このような発言がある時は、かなり慎重に経過を見る必要があります。
もちろんなんでもなかったね、ということの方が圧倒的に多いですが、ごく一部、その先に進行していくことは実際にありました。
だからこのような感覚が持続するときは、ちゃんとみてもらったほうがいいでしょう。
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