小児の統合失調症の診断と治療、治療開始の注意点、について名古屋の児童精神科医が解説
小児の統合失調症の診断と治療、治療開始の注意点、について名古屋の児童精神科医が解説
こんにちは、名古屋市千種区 児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。
今回は小児の統合失調症の診断と治療、治療開始の注意点、について解説します。
統合失調症の好発年齢は思春期くらいであり、初期症状をこの段階で見つけることができるかが、重要です。
最初に統合失調症の診断基準についてまずは確認しましょう。
DSM-5(『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版)における統合失調症の診断基準は以下のようになっています。
統合失調症の診断基準(DSM-5)
症状の特徴:
A. 次のうち少なくとも2つ(またはそれ以上)の症状が1ヶ月間(またはそれ以上)の期間にわたって顕著に存在すること。
妄想
幻聴
離結合的言語(統合失調症的会話)
極端に離結合した行動(猫型行動など)または陰性症状
不適切または平板な感情表現
ただし、もし妄想や幻聴が非常に顕著な場合は、それだけで診断基準Aを満たすことがあります。
社会的/職業的機能の低下:
B. 主要な生活の領域(仕事、対人関係、自己管理など)での機能が明らかに低下していること。
継続性:
C. 症状が連続して6ヶ月以上持続していること。この6ヶ月間には、少なくとも1ヶ月間は症状基準A(妄想、幻聴、離結合的言語など)があり、その他の期間は陰性症状や軽度の陽性症状が存在すること。
他の精神障害の排除:
D. 統合失調症型障害、双極性障害、うつ病性障害といった他の精神障害が原因でないことが明らかであること。
物質使用や医療状態の排除:
E. 物質使用や別の医療状態が症状の原因となっていないこと。
共存する発達障害:
F. 自閉症スペクトラム障害や幼児期のコミュニケーション障害の歴史がある場合、明確な妄想や幻聴が1ヶ月以上存在する必要がある。
となっています。
しかし幻覚、妄想は統合失調症の前駆症状、初期症状としては認められることはほとんどありません。
では何が最初にでてくるのか
それはやはり、統合失調症の中核症状である、自我障害、つまり自我漏洩症状です。
なんとなく不安、怖い、不気味な感じがする、といった、自我境界がくずれていく時に認められる、非常にあいまいな、しかし本人からするとぶっとつきまとってくるなんだか分からないが恐怖感があるというものです。
世界の様子がある時から変わった、と話している子もいました。
不気味な感じがする、という子も多いです。
強迫症状が前駆症状となる子も多かったです。
このように、幻覚、妄想という言葉にとらわれていると、診断を見逃します。
前駆症状が認めた時点ではもちろん統合失調症の診断はつきませんが、そうなるかもしれないとかなり注意しながら、慎重にフォローしていく必要があります。
治療も、もし内服を使うとしても、統合失調症の症状を増悪させる可能性のあるものを、前駆症状に対して使うべきではありません。
急激に増悪するケースもあり、その場合はすぐに入院治療できる準備を進めておく必要もあります。
まとめ
今回は小児の統合失調症の診断と治療、治療開始の注意点、について解説しました。
成人になってから発症する場合と、子どもの時に発症するのは、経過も治療スタートする時期も異なると思います。
不登校、の中には自我障害によっていけなくなった、という子も結構いました。
外にいけない、という子も多かったです。
ですので現象にまどわされず、病態水準が重いかどうかを見極めることが重要です。
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