臨床情報「食事療法の考え方について」
栄養療法の根幹をなすのが食事です。当院でも管理栄養士が皆さんのお力になれるように一緒に勉強してくれていますので、今後は随時栄養指導も行なっていきたいと思います。
食事療法で大切な考え方 まず前提となるのは糖質制限です。 糖質制限がなぜ重要か。大きく2つに分けるとすればインスリンスパイクの問題と糖代謝の問題です。
インスリンスパイクとは。
食事で血糖値が上がると血中にインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは血糖を下げるホルモンで、これが足りなかったり、出過ぎたために疲弊して枯渇した時に糖尿病になります。なので糖尿病ではインスリン注射をするわけです。血中のインスリンは糖(グルコース)を筋肉中に取り込み血糖値を下げます。また、取り込みきれないグルコースは脂肪に置きかわり皮下脂肪として蓄積されます。 この血糖値が下がる時に人は眠気や倦怠感、イライラ感、空腹感を感じるのです。血糖値の上がりやすい食べ物や体質の人はこの作用が強くなり、食後血糖が急に上がり、急に下がるのです。このように急激な血糖の上下を起こすのがインスリンスパイクです。
ADHDや衝動性などの精神症状の中にもこのインスリンスパイクが関係している事が分かっており、糖質制限をするだけでADHD症状が治るケースがあります。
糖代謝。
先ほどお話ししたように腸から吸収された糖分(グルコース)はエネルギー源になるとともに脂肪として取りこまれます。糖がエネルギーになるのには解糖系という経路を通りますが、その際に大量のビタミンB群や鉄が必要となります。また乳酸も発生するため疲れやすくなります。 実は、脳内でセロトニンやノルアドレナリンなどのうつや意欲に関係する神経伝達物質が作られる際にもビタミンBや鉄が必要です。 ですので、セロトニンが足りない「うつ」に糖質負荷が増えるとビタミン、鉄の欠乏がさらに進み、いくら抗うつ薬で刺激をしても脳内にセロトニンがそもそも足りないので薬が効きません。 特に、毎月月経で出血する女性は鉄欠乏が半端ないです。 糖質を減らし、体に余計な負担をかけないことは精神症状を改善するために大切な栄養指導になります。
当法人では医師による栄養解析、栄養療法、管理栄養士による栄養指導行っています。
記事:医療法人永朋会 和光メンタルクリニック大阪中津 院長 白岩恭一