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臨床情報 「コンサータと抑うつ」

児童精神科医としてコンサータ(メチルフェニデート)は治療上大きな意味をもつ薬剤ですが、処方の取り扱いについて今後より丁寧なものになるガイドラインが決まりました。

 より安全に使用(そして薬の流通)されやすくなるメリットがある一方で、内服の必要性の高い患者さんへの処方のハードルが上がるのではないかと懸念しております。



 

 複数の研究において、うつ病にADHDは併存しやすいことがわかっております。

 成人のADHDでは20〜50%にうつ病が併存し、一方でうつ病のある成人の⒐4%にADHDが併存したという報告があります。(Depression Journal 18.22-23.2018)



 



 実際の診療において、僕自身も50%とは言わないまでも、心療内科に受診に至る悩みをもつADHDの患者さんは多くの方に抑うつ症状をみとめると感じています。



 抑うつ気分になる原因は複数あると考えられますが、

 よく認めるケースであり、ADHDの二次症状が原因である際、ADHDに対する中枢神経刺激薬が抑うつの改善、再発予防に効果的であるといえます。





 <例えば>

 仕事において、同じケアレスミスや遅刻や指示の忘れを繰り返したために、上司から叱責されて抑うつ気分になられた患者さんでは・・

 ADHDの不注意症状、遂行機能障害に対してコンサータを内服することで、仕事のミスが減り集中して作業が進むため前向きに生活ができるようになり、抑うつ気分の改善に至ることをしばしば認めます。









 一方、矛盾するようですが、コンサータの添付文書にも記載の通り、コンサータ内服により「うつ病の悪化」のリスクもありうると報告されています。(重症うつ病の患者さんには禁忌になります。)





 

複数の研究において、動物実験では早期の中枢神経刺激薬の使用がうつ病様行動を増やすことが示されていますが、

 疫学研究ではADHDに対する中枢神経刺激薬の治療はむしろうつ病の発症を抑制することが示されています。











 個人的には、うつ病(または抑うつ気分)により神経が研ぎ澄まされているような状態の方(ささいな音が気になり眠れないなどの過敏な状態。不安が強い状態)では、活動性や集中力を高めるコンサータの内服にて症状が強まるリスクが高いと感じます。

 その場合、ゆったり休むような内服治療の方が適していると思います。





 







 どのような内服薬でも使い方次第で大きな効果も、副作用も起こりえます。

 当たり前のことですが、まずは患者さんの状態を伺うことが大事ですね。



 





名駅さこうメンタルクリニック 院長

丹羽亮平