臨床情報「精神科診断における妥当性について」
精神医学を扱う上で難しい点は、まず「診断」についてです。
身体医学(骨折、癌、肺炎など)とは診断についての考え方も分類方法も異なり、
医療者も患者さんサイドも期待する「診断に至る客観的な物的証拠、身体医学的な検査法」がないことが挙げられます。
では、精神科の診断がでたらめなのではないかと不安になりますが、
しかし、我々が目指すところは、精神科医の間でも患者さんも納得出来る、より「妥当」であり「深い」診断を意識することだと思っています。
発達障害の方など、精神科領域では症状やお悩みに診断名がぴったり当てはまらないことがしばしばあることは事実です。
症状がある種の個性の延長である場合もあり、ヒトの多用性と同じように、症状のあり方も多様です。
そのため、診断名が症状にジャストフィットしないケースもあり、診断者により診断名が異なることがあることは、そういうことだと思っております。
診察でよく実感することですが、感覚過敏やこだわりに伴うお悩みを認める患者さんを多くみとめますが、
ちょうど当てはまる病名がありません。
コミュニケーションの苦手さ + こだわり・感覚過敏(鈍磨)
であれば、発達障害(自閉スペクトラム症)が該当しますが、
コミュニケーションの苦手さが目立たない時は、
正式な病名ではないですが、「感覚過敏」「自閉スペクトラム症の診断閾値未満」と患者さんには説明させていただくことがあります。
悩ましいものです。
名駅さこうメンタルクリニック
院長 丹羽亮平