臨床情報 「抑うつに対する薬物療法について」
抑うつに対する薬物治療について
治療の核となるものですが、必ずしも全員に処方するわけではありません。
また、どのような内服薬を使うのかは、診断の見立てによって決まります。
例えば、「抑うつ感」が主訴であるとき、診断は本当に「うつ病」なのか?
○職場の人間関係に悩み、業務上のトラブルをきっかけに憂うつ気分が悪化し休職されたケース
・不安症状、強迫症状、妄想、そう症状など、他の症状の有無は?
・初めてなのか、繰り返すものなのか
→繰り返す「うつ」であるならば、背景にコミュニケーションの苦手さ、こだわり・感覚過敏(外界刺激に左右されやすい 気圧・気温変化など。)、不注意・多動衝動性などの発達の悩みはないのか。
生まれ育った環境はどのようなものか。
→前回の「うつ」の時はどのような対応をしたのか
抗うつ薬を過去に内服しても奏功しなかった経験のあるかたは、そもそもうつ病なのか?。
薬剤難治性の「うつ」の傾向のある際、TMSを優先することも考慮します。
・発達の悩みが背景にある時
「抑うつ気分」の背景に、発達障害(自閉スペクトラム症)、ADHDの傾向を認めるかたは少なくないと思っております。
苦手な状況を離れて休息し抑うつ症状が軽快された後、ミスを繰り返すこと・指示を忘れる(不注意の可能性)、計画立てた行動の苦手さ(遂行機能障害)等にADHD薬を内服することで「抑うつ」の再発を防ぐことが可能です。
また、ADHD薬の内服により気分の安定性が増すかたもしばしば認めます。
発達障害やADHDを背景に持つ情緒の不安定さ、ストレスに伴い身体症状が出やすい方、外界刺激(気圧、温度など)の影響を受けやすい方に対して、漢方も積極的取り入れております。
・持病の有無
持病や他の内服薬によっては内服を勧められない薬があります。
・心理カウンセリングなど薬物治療ではない治療手段はないのか
薬物治療には一定のリスクがあることは否めません。
薬物治療以外に適切な対応があれば、まずそちらを優先します。
すべての疾患についていえることですが、まずは問診にて疾患の見立て(診断)を明確に行うことが重要です。
また、お悩みに対する治療の患者さんのご希望を考慮したいと思っております。
名駅さこうメンタルクリニック院長
丹羽亮平