臨床情報「小児の特定の恐怖症(Specific Phobia:SP)」
今回は子どもにおける特定の恐怖症(Specific Phobia:SP)についてです。
あまり聞きなれない疾患だとは思いますが、不安障害の一つです。
その他の疾患と合併して認められるケースもありますので、鑑別が重要です。
自分の著書から一部引用しました。
特定の恐怖症(Specific Phobia:SP)
特定の恐怖症と診断するためには,ある特定の物や場所に対する過剰で持続する恐怖が必要であり,その結果,過度の苦痛や機能的障害が発生する。SPの子どもは恐怖の対象である刺激に直面すると常に不安を感じてしまう。特定の恐怖には5つのカテゴリーが定義されている。すなわち,動物タイプ(動物や昆虫),自然環境タイプ(雷,自然災害,高所,水場,など),血液-注射タイプ(血液,怪我,注射,など),場面タイプ(飛行機,エレベーター,橋,など),その他,である。健常児が示す標準的な恐怖から区別するために,SPでは恐れる刺激の予期や暴露の場面では,必ず激しい苦痛を伴わなければならない。子どもの場合には,恐怖はしばしば,泣くこと,癇癪,両親からの分離を拒絶すること,などによって表現される。SPでは結果としてしばしば恐怖の対象の刺激を回避するようになり,それによって年齢相応の経験が制限されることになる。
治療ではCBTが第一選択として考えられており,子どものSPを対象としたCBTが開発され有効性が証明されている31)。また薬物療法では,SPを含む子どもの不安障害を対象としたプラセボ対照比較試験においてfluoxetineの有効性が証明されている。
<参考文献>
加藤晃司,ほか:小児・思春期‐不安‐.脳とこころのプライマリケア(下田和孝),pp.534-542,シナジー,東京,2010.
記事作成:加藤晃司(医療法人 永朋会)