臨床情報 「有名人のADHDカミングアウトについて」
有名人のADHDカミングアウトについて
最近とても暑い日が続きますね。
猛暑の中わざわざ当院に来院される患者さんには、こちらもできる限りの丁寧な診察を行うことでお気持ちに返していきたいと思っています。
YOUTUBEで女性有名人が注意欠如多動症(ADHD)の告白をされたことが先週くらいから話題になっていましたが、そのことについての気になる点を書きます。
ただし、女性有名人のオリジナルの動画は見ておらず、ネットニュースで読んだ内容をもとにコメントしているため、実際の動画ではもっと丁寧な説明や違った言葉のニュアンス、文脈があるのかもしれません。
あくまでネットニュースのみの内容に対しての意見です。
しかし、おそらく自分同様にネットニュースのみで情報を入手している人も多いと思うので、一般的な出来事における認識かもしれません。
まず、ADHDの診断は主に幼少期からの関連するエピソードや、現在の詳細なお困りの状況を伺うことで診断に至ります。つまり問診がメインです。
診断する際に心理検査を行うことが多いですが、診断にたいしては補助的な役割です。
(例えば、知的検査を行うことで知的能力がわかり、知的障害といった症状に関わる最も重大な診断名が変わることはあります。また、心理検査を行うと能力の偏りなどがわかるため、治療にて非常に役立ちます。)
女性有名人の方は「脳波にて診断された」との説明がありますが、脳波(おそらく定量的脳波検査)のみでADHD、発達障害などの診断はできません。
おそらく検査を施行したクリニックでも、これまでの詳細な生育歴、学生時代から社会人にかけての生活状況などの問診がされて、その上で、補助的に定量的脳波検査は施行されて診断されたのではないでしょうか。
「検査にてADHD、発達障害が診断される」ことは誤りです。
有名人の方の障害のカミングアウトは、その疾患の社会的な認知を広げることや、同じ疾患を持つ方に前向きな共感性を生むものだと思います。
また、疾患への適切な理解や、疾患によるお悩み、ポジティブな取り組みが世間に広まることを期待しています。
名駅さこうメンタルクリニック
院長 丹羽亮平