臨床情報「広汎性発達障害(pervasive developmental disorders;PDD)の診断について」
今回は成人期、広汎性発達障害(pervasive developmental disorders;PDD)の診断についてです。発達障害に関しては個人的には一つ前の診断基準である、アメリカ精神医学会の診断統計マニュアル第4版(DSM-Ⅳ-TR)(American Psychiatric Association, 2000)の方が分かりやすいと思っているので、今回はこちらを使って解説します。
① DSM-Ⅳ-TRによるPDD
PDDは発達のいくつかの面における重症で広範な障害として特徴づけられ,DSM-Ⅳ-TRでは自閉性障害,レット障害,小児期崩壊性障害,アスペルガー障害,特定不能の広汎性発達障害(PDDNOS)に分けられています。PDDとは,①相互性対人関係の質的な問題,②コミュニケーションの質的な問題,③行動・興味の限定的,反復的で常同的な様式,の3つの領域に障害があることで特徴づけられます。
② 成人期でのPDDの診断
DSM-Ⅳ-TRでは年齢にかかわらず診断することが可能であり,成人で受診する場合にも診断は上記の診断基準に基づいて行われます。
DSM-Ⅳ-TRによると,自閉症と比較して特にアスペルガー障害の診断には以下の2点が要求されています。第1に,臨床的に著しい言語の遅れがない(例:2歳までに単語を用い,3歳までにコミュニケーション的な句を用いる),第2に,認知の発達,年齢に相応した自己管理能力,(対人関係以外の)適応行動,および小児期における環境への好奇心について臨床的に明らかな遅れがない,という点です。さらに,注目すべき点は優先規則のために自閉症の診断がついた者はアスペルガー障害とは診断されないことであり,自閉症からアスペルガー障害への診断の移行は認められないとされていることです。
③ PDDとADHD(注意欠如多動性障害)の鑑別
PDDの患者にADHDの症状が見られることは臨床上よく経験することですので、その鑑別について少しふれておきます。実際の治療場面においては,PDDの患者に多動性や衝動性などの症状が見られる場合でも,年齢と共に次第に落ち着いてくることはしばしば経験することです。しかし一方で,PDDの症状が落ち着いてくることに伴い,ADHDの不注意の症状が目立ってくることもあります。同じ子どもでも年齢によってPDDの側面とADHDの側面がそれぞれ目立つ時期があり,発達に伴って病像は常に変化し続けると考えるべきでしょう。
記事作成:加藤 晃司(医療法人 永朋会)