臨床情報 「トラウマとはなにか ~身近に起こるトラウマ~」
トラウマとはなにか ~身近に起こるトラウマ~
前回の「すずめの戸締り」についてのブログで、トラウマ、PTSDについて触れたので、もう少し詳しく書きたいと思います。
トラウマの「どこでもドア」~すずめの戸締り | 大人と子ども こころの専門医ブログ〜名駅さこうメンタルクリニック (ameblo.jp)
トラウマという言葉そのものは、意外に日常でも耳にする機会が多いのではないでしょうか?
カジュアルに「辛くて感情や記憶が拭い去れない体験」という意味で使われていると思います。
精神医学的な「トラウマ」の定義も大体そのとおりです。
辛くて感情や記憶が拭い去れない体験であり、身体症状(動悸、発汗、息が苦しい、など)や精神症状(不安、パニック、抑うつ気分、眠れないなど)を引き起こしうるもの、と解釈されています、
もともとは、トラウマを引きおこす原因として、「戦争や大震災、家族の死などの死を意識するような強烈な体験」が言われていましたが、
今はこういった「めったにない体験」に限らず、人それぞれにより「辛くて感情や記憶が拭い去れない体験」がトラウマ体験の原因になると考えられます。
つまり、「トラウマ体験」は非常に主観的なものであり、本人が上記の症状を認めるならば「トラウマ」です。
例えば、お子さんの患者さんで伺う相談では以下の例があります。
「先生に宿題をやっていないことを叱られて以来、学校に行こうとすると腹痛・吐き気が出現して行けない。」
そもそも児童患者さんは、症状や思っていること、感じていることを言葉で伝えることが難しい方が多いです。
しかし、こちらから聞くと、「先生のことを何度も思い出す。怖い。夜も寝れない。」という訴えを認めることがあります。
また、感覚過敏のような被刺激性の高いお子さんは一層起こりやすいように感じます。
こういった際は、トラウマに対する治療と同じような対応をすることが多いです。
(しかし、この例では誘因をつくった教師を責めるものではありません。)
そして、トラウマによる身体症状や精神症状が継続し生活に支障を来たすものをPTSDといいます。
名駅さこうメンタルクリニック
院長 丹羽亮平