内服も使い方次第
内服も使い方次第
脳神経学、脳科学の研究が進むにつれ、ある病気に対する機序や病態が解明されると、それに対して薬を作ることが可能となってきました。
脳内で特定の場所で特定の物質の低下があれば、それを正常値にもどすような機序の薬が作られる、というような感じで、正常な状態に近づけようとする治療薬が開発されてきました。
心とは、目に見えないものであり、脳が感じているものである、というのは間違っているわけではないと思います。
一方で、たとえば脳内での特定の物質の低下は、いろんなことの最後に発生した結果にすぎない、という考えもあると思います。
実際は、これらが混在していることが多いのではないでしょうか。先に機能障害が発生したパターンもあれば、結果としてそうなった、ということもあります。
進行性の疾患であれば、基本的に治療薬の使用は必要だと思います。また明らかに機能的な原因が判明している症状であれば、やはり内服治療が妥当です。
しかし何か心的な原因や現実的なストレスのようなものがあって、それをきっかけにして発生した症状であれば、内服は絶対ではないと思います。
また発達障害のように、生まれ持った性質のようなものに対しても、内服は一時的な効果をもたらすものしかないので、やはりケースバイケースとなります。
内服は使い方次第だと思います。
内服を使って症状が改善するスピードをはやめたり、一時的であったとしても内服を使った状態で獲得した成功体験や知識は本人の中に蓄積されていきます。
自分を自分でコントロールするために使用するのであれば、使いこなすことができるはずです。
心理療法で自身を深堀していくとしても、ある程度のエネルギーがなければ、それに向き合うことができません。
また治療につかえる時間が限られている方も少なからずいるはずです。
治療はバランスだと思います。
治療していく中で発生してくる色々なことに対して、折り合いをつける作業自体もまた、治療的だと思います。
医療法人永朋会 理事長
加藤晃司