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転移 逆転移

転移 逆転移

転移は 患者さん→治療者
逆転移は、治療者から→患者さん

感情、葛藤、欲求、態度などなど、あらゆる目に見えないものたちを、お互いにぶつけあっている、ということです。
まあ、当たり前ですよね。

言葉にすると、転移、逆転移、ってカッコよく書いています。
しかし何事も、言語化し、名前を与えることで、一般化、共有化、することができるようになります。
だから私は話し言葉を、ちゃんと文章にして残すことは、かなり意味があると思っています。

無意識化でおきていることだから、ここからが逆転移で、ここまでは自分のもともとの持ち物、みたいに区別することはもちろんできません。
その場で発生している生ものですから、診察室の外にもっていくと、また別物になったり、なくなったりしてしまう曖昧なものです。
でもその時は確実にそう感じているのです。いつも忘れてしまいそうになるので、忘れないうちに文章にするようにしていますが、時間ないときはメモ程度になります。

例えばですが、治療をくりかえしていると、その人にとってもっとも大事、もくしは欠落している相手を、気づいたらそのポジションの人を演じているような感覚になることがあります。ああ、きっとこの人は、今自分のことを、Aさん(具体名でもいいし、父親、母親、夫、妻みたいな相称でもいい)のようなものとして扱っているな、と感じるわけです。役という感じに近いなと私は思っています。私を通じて、その奥をみているように思います。

毎回同じ役のときもあれば、違う時もありますが、一般的にはその人(対象)との葛藤が解決したり、ある程度腑に落ちるところまでくるまでは、同じ役が続くことが多いと思います。
もちろん自問自答のようなパターンもあるので、その時は自分は壁打ちみたいな存在だなと思っています。
その時自分の中に流れ込んでくる感情や思考は、患者さんが自分自身に対して無意識で思ってことなのかな、とぼんやりと考えたりしています。

逆転移も、使い方次第では割といい武器になります。
相手に対して、湧き上がる感情、自分だったらそう思わないような感じですと、なりきっている役にひっぱられていることもありますし、患者さんがその役の人に対してそう思われていると考えていることかもしれません。
相手が話している内容や雰囲気と、こちらが感じている感情にずれがあるときなんかも、ヒントにはなります。
口ではこういっていますが、このように思っている可能性もあるかもしれませんね、とか言ったりします。

とにもかくにも、曖昧なことばかりですから、ふわっとした表現しかしません。こうかもしれませんね、くらいの。

自分の中でネガティブな負の感情がでるときは、強い感覚ですので、結構チャンスだと思っています。
自分がイラついたりしていると、あれなんでこんなにイラつくのかな、となります。どこからか投げ入れられてた感情のことが多いからです。

転移、逆転移、お互い干渉しあうのは当たり前です。生身の体を使ってやりとりしているわけですから。
移動し続ける感情や思考に対して、なんらかの解釈をして、それを相手になんとなく戻していく、もどさずしばらくこちらで預かっておく、みたいなことを治療者側は大なり小なりやっていくわけです。

慣れてくると、プライベートな場面でも、ふと同じようなことをやっているな、と気が付くことがあります。きっとみんな、自然にそういうことをやっているのですが、言葉の意味をしっていると、知らない人よりも、客観化、概念化、するのが早くなりますからね。

といっても、それでコミュニケーションがうまくなるわけではないのが、人ってものです。
仕事では冷静になれても、プライベートはそうではないからでしょう。

気が付いたら、自分じゃない役を与えられている、これは結構あるので、そういう見方で自分と他人の関係をみなおしてみると、興味深いかもしれません。

医療法人永朋会 理事長
加藤晃司