生育歴を聞く意味
生育歴を聞く意味
生育歴
私が児童精神科に入って、それまであまり意識してこなかった単語ランキングの上位をしめるものです。
生育歴からはじまり、生育歴におわる
0歳、そもそも養育者に対し「子どもができた時、どう思いましたか?」から最初の質問はスタートします。
もちろん、この質問は最初にいきなり聞かないことも多いです。
なぜか?
子どもの前で聞かせるのはちょっとな、と思う答えが返ってくる可能性があるからです
この時点からつまづき続けている、子ども、養育者(もちろん養育者の親との関係も)、は多いです。
生育歴は、形を変えながら、世代間伝達していきます。
しかもどこかの世代で救いの手がなければ、少しずつ具合の悪さは蓄積していきます。
多くの場合は、目の前にいる養育者のみを責めることはできないことが多いです。
養育者も自分の親との生育歴を聞くと、同じくらい具合が悪いことが多いからです。
特に0歳から3歳くらいまでがもっとも重要な時期だと思います。
ですが、この年齢のことは本人が覚えていないので、養育者、もしくはそれに代わる人から聞くしかないのですが、調子が悪ければ悪いほど、養育者から正確な生育歴を聞けないことはあります。そもそも病院にきてくれない、ということも多いわけです。
自分一人ではどうしようもない3歳までの時期、どう育てられたかは、正直、そのあとそれなりの生育環境であったとしても、精神の核のようなもので、大人になって、ふとした時に、そのころの問題が噴き出すことがあります。それくらい、無意識化にまでおよぶくらい、影響力のあるものだと思います。
0歳からの生育歴をたどると、なんらかの問題は、形をかえて、なんども現れていることが多いです。
ということは、これから先の未来でも、そのことが形をかえてなんらかの問題を引き起こす可能性があるということです。
予測できるのはいいことです。
問題がでたときの、反応が早くなるからです。
逆に0歳からの連続性を感じさせない問題の場合は、現実的な問題がなにかある、器質的な病気(精神科、身体、そのどちらも)になっている、などを考える必要があります。突然ふいにできたもの、ととらえると、見つけられることは多いです。
生育歴、これまでどう生きてきたか、は子どもでも大人でも、高齢者になっても、精神科では切っても切り離せないテーマだとおもいます。
医療法人永朋会 理事長
加藤晃司