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境界性パーソナリティ障害(BPD)の不認証環境とは何か、名古屋の児童精神科医が解説

境界性パーソナリティ障害(BPD)の不認証環境とは何か、名古屋の児童精神科医が解説


こんにちは、名古屋市千種区、医療法人永朋会 和光医院、児童精神科医の加藤晃司です。

今回は、境界性パーソナリティ障害(BPD)の不認証環境とは何かについて解説します。


不認証環境、って聞いたことありますでしょうか

BPDが発症する原因として、2つあると言われています。
一つ目は、生まれつきの気質、易刺激性、気分易変性、このあたりはもともとある程度存在する、と言われています。

二つ目が不認証環境、といわれる環境因子です。


不認証環境を教科書的にまずは説明します。

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境界性パーソナリティ障害(BPD:Borderline Personality Disorder)における「不認証環境」とは、通常、個人がその感情、思考、感覚、そして存在を他者から正当に認められていないと感じる環境または状況を指します。ここで言う「認証」とは、その人の感じている感情や経験が他人によって肯定され、理解され、認められることです。境界性パーソナリティ障害の人々はしばしば自己像が不安定で、人間関係が不安定であり、感情調節にも問題があるため、他者からの確認や支持を特に強く求めます。

不認証環境の特徴
無効化された経験: 個人の感情や考えが否定されたり、その重要性が軽んじられたりする。
理解の欠如: 周囲からの共感や理解が不足している状態。
否認されるニーズ: 基本的なニーズや欲求が満たされず、否定される。
感情的な否認: 個人の感情が正当であることを認めず、感情を抑制するよう要求される。

不認証環境がBPDに与える影響
不認証環境は、特にBPDのある人にとって深刻な影響を及ぼす可能性があります。感情や自己表現が無効化される経験は、自己価値の感覚を弱め、感情の不安定さを増大させることがあります。そのため、彼らは他人との関係性において過剰に承認や確認を求める傾向があります。これがBPDの特徴的な「対人関係の不安定さ」や「感情の不安定さ」に寄与することがあります。

不認証環境の管理と対策
療法: ダイアレクティカル行動療法(DBT)や精神分析的療法などの専門的な治療が、感情の調節と自己認証のスキルを患者に教えるのに有効です。
肯定的な関係: 安全で肯定的な人間関係を築くことで、感情の認証を経験しやすくなります。
自己肯定: 自分の感情や考えを内面化して肯定する練習を通じて、自己認証の能力を高める。
不認証環境は、BPDの治療や管理において考慮すべき重要な要素です。それは個人が感情的に健全で安定した生活を送るための重要な障壁となり得るため、治療の過程ではこの環境の影響を軽減し、より肯定的で支持的な環境を築くことが目指されます。
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といった感じです。

適切に認証されない環境、簡単に言えば、ちゃんと養育者からほめてもらっていない、状況です。

養育者、主に母親ということになりますが、母親もBPD傾向を持っていることが多いです。
BPDは世代間伝達していく疾患です。
どこかでその流れを断ち切らなければ、同じようなことが繰り返されていきます。

養育者の顔色をみながら接触し続けているため、総じて我慢強い人が多いです。対人関係でもちょうどいい距離感をとることが非常に苦手となり、基本は遠い、近いと近すぎる、という感じです。

治療は自身の生育歴を振り返り、不認証環境があったことを認識ができたうえで、カウンセリングないしは診察で、適当な二者関係の練習をしていく流れとなります。



まとめ
今回は、境界性パーソナリティ障害(BPD)の不認証環境とは何かについて解説しました。
不認証環境の混在、そして、もともとの気質、この二つの存在がBPDの成立には必要です。
それほど簡単に診断がつくようなものでもありません。
逆に診断がつくようならば、治療目標としてやっていかなくてはいけないことも明確です。
時間はかかりますが、それをのきりった時、症状が改善すること以上の何かをもたらしてくれると思います。

医療法人永朋会 和光医院
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