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ADHDと鉄・亜鉛の関係について、名古屋の児童精神科医が解説

ADHDと鉄・亜鉛の関係について、名古屋の児童精神科医が解説

こんにちは、名古屋市千種区 児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。


今回は、ADHDと鉄・亜鉛の関係について解説します。


ADHDは、栄養素との関係が結構研究されている疾患です。

発達障害は生来の障害であるため、子どもの頃から病院に受診することが多いです。
そのため、栄養の研究が進んだのかもしれません。

データが一番でているのは鉄と亜鉛です。

私が東海大学病院に勤務している時も、鉄と亜鉛に関しては、初診時に採血してデータを取るようにしていました。


まずはADHDと鉄の関係についてです。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)と鉄不足との関係については、いくつかの研究が行われています。以下に、この関係に関する主な点をまとめます。

鉄と脳機能: 鉄は脳の機能、特にドーパミン系の神経伝達に重要な役割を果たしています。ドーパミンは気分、注意、動機付けに影響を与える神経伝達物質で、ADHDの症状と関連があります。

鉄不足とADHD症状の関連性: いくつかの研究では、ADHDの子どもたちにおいて、低い鉄レベル(特にフェリチンの低いレベル)が見られることが示されています。フェリチンは体内の鉄貯蔵量を反映する指標です。

鉄不足による神経伝達の影響: 鉄はドーパミン受容体の機能とドーパミンの合成に関わっています。鉄不足はこれらのプロセスを阻害し、ADHDの症状を引き起こす可能性があります。

鉄サプリメントの効果: 一部の研究では、鉄のサプリメントがADHDの症状を緩和する可能性が示唆されています。ただし、これらの研究結果はまだ初期段階であり、決定的な結論には至っていません。

個々の違い: ADHDのある全ての人が鉄不足を経験するわけではなく、また鉄不足がADHDの唯一の原因ではありません。ADHDの原因は多岐にわたり、遺伝的、環境的、生理学的な要因が複雑に絡み合っています。

医療専門家の重要性: 鉄サプリメントを始める前に、医療専門家に相談することが重要です。鉄の過剰摂取は健康に害を及ぼす可能性があります。

総じて、ADHDと鉄不足の関係はまだ完全には解明されていませんが、鉄の神経伝達への役割とADHD症状との間に一定の関連性が示唆されています。



次に亜鉛とADHDとの関係についてです。


ADHD(注意欠陥・多動性障害)と亜鉛不足の関係については、いくつかの研究が行われています。以下は、この関連に関する現在の知見の要点です。

亜鉛と脳機能: 亜鉛は脳機能、特に認知機能と神経伝達に重要な役割を果たしています。亜鉛は神経系の発達と機能に必要で、ドーパミンやノルアドレナリンなど、ADHDに関連する神経伝達物質の合成と調節に影響を与えます。

ADHD患者における亜鉛レベル: いくつかの研究では、ADHDを持つ子どもたちにおいて、亜鉛のレベルが低いことが報告されています。これは、亜鉛不足がADHDの症状に関連している可能性を示唆しています。

亜鉛不足とADHD症状の関連: 亜鉛は神経伝達物質の活動に関与しており、特にドーパミン系の機能に影響を及ぼす可能性があります。亜鉛不足は、注意力の低下、衝動性、多動性などのADHDの症状を引き起こすか悪化させる可能性があります。

亜鉛サプリメントの効果: 一部の研究では、亜鉛のサプリメントがADHDの症状を改善するのに役立つ可能性が示唆されています。ただし、これらの結果は限定的であり、さらなる研究が必要です。

個人差: ADHDのある全ての人が亜鉛不足を経験しているわけではありません。また、亜鉛のレベルとADHD症状との間の関係は個人差が大きいです。

栄養補助と医療相談: 亜鉛サプリメントを考慮する前に、医療専門家に相談することが重要です。亜鉛の過剰摂取は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。


鉄と亜鉛は機能が似ており、どちらもドパミンやノルアドレナリンの合成や調整に関わっているため、ADHDとの関連が指摘されているのだと思います。


まとめ
今回は、ADHDと鉄・亜鉛の関係について解説しました。
鉄や亜鉛不足が改善すればADHDが治るというものではないですが、症状の改善、もしくは将来的に良い効果があるなら、鉄や亜鉛の不足がないか、あるなら適度に補填していく、というのは一つの治療的アプローチとしては悪くないのではないかと思います。


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