子どもの統合失調症について、名古屋市の児童精神科医が解説
子どもの統合失調症について、名古屋市の児童精神科医が解説
こんにちは、名古屋市千種区 児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。
今回は、子どもの統合失調症について、解説します。
まずは統合失調症とはどんな疾患かを確認しましょう。
①統合失調症とは
統合失調症は、思考、感情、行動に深刻な影響を及ぼす慢性的な精神障害です。この病気は、現実の認識が歪み、幻聴や妄想などの精神症状(陽性症状)、感情の平板化や意欲の低下などの欠如症状(陰性症状)、そして認知機能障害を特徴とします。統合失調症は個人の社会的機能や日常生活にも大きな影響を与えることがあります。
(1)統合失調症の主な症状
陽性症状:現実には存在しないものを見たり聞いたりする幻覚、誤った信念や偏った考えを持つ妄想、散漫な思考や発話などが含まれます。
陰性症状:感情の表出の減少、意欲の欠如、社会的引きこもり、日常生活の活動への関心の低下などが含まれます。
認知機能障害:記憶、注意、計画立案能力、意思決定能力の低下などが含まれます。
(2)原因
統合失調症の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝、脳内の神経伝達物質の不均衡、脳の構造的変化、さらには環境要因や発達中の脳へのストレスなどが複合的に関与していると考えられています。
(3)治療
統合失調症の治療は、通常、薬物療法、心理社会的介入、および支援サービスを組み合わせて行われます。抗精神病薬は陽性症状の管理に有効であり、症状の重症度や機能の低下を減少させることができます。心理社会的介入には、個別やグループでの心理療法、社会技能訓練、就労支援、家族支援が含まれ、これらは患者が日常生活での課題に対処し、社会復帰を目指すのに役立ちます。
②統合失調症の好発年齢は?
統合失調症は一般的に若年成人期に最初の症状が現れることが多いです。好発年齢は、男性では18歳から25歳の間、女性では25歳から35歳の間とされています。男性の方が女性よりも若い年齢で発症する傾向があり、また男性の発症数が女性よりもやや多いとされています。ただし、これは一般的な傾向であり、統合失調症はこの年齢範囲外で発症することもあります。
少数ですが、小児期や青年期、さらには40歳以上の成人期に発症するケースも報告されています。特に、女性では30代後半や40代で発症するケースもあり、これらの年齢で発症した場合は、"晩発性統合失調症"と呼ばれることがあります。
統合失調症の予後や症状の表れ方は、発症年齢によって異なる可能性があります。早期に適切な治療を受けることが、病気の管理と患者の生活の質の向上につながります。
といった感じです。
つまり子どもの時に発症するケースはあまりありません。
ですが、早期兆候が出る可能性はありますし、私も少なからず治療で関わったことはあります。
前駆症状としてはさまざまな症状がでます。特に強迫症状は頻度が高いと思います。
そして、統合失調症の中核症状である、自我漏洩症状、これがなんとなく感じられるようになると、注意が必要です。
急激に増悪するパターンを何度か経験しているからです。
自我漏洩症状とは、自分の自我境界、つまり自分と他者、世界を分けている心の壁が壊れていくことです。
他人の考えが入ってきたり、自分の考えがもれでていたり、しているような感覚を持ちます。
これは想像したら分かりますが、ある時から世界が変わってしまった、という感覚ですので、恐怖を感じます。
漠然とした恐怖、こう表現したらいいかと思います。
これがでてきたら、早期の治療をスタートするかどうか、判断しなくてはいけません。
まとめ
今回は、子どもの統合失調症について、解説しました。
子どもの統合失調症は確率は高くないですが、重篤な疾患ですので、常にこの疾患ではないかを意識する必要はあります。
特に強迫症状、なんとなく元気がない、漠然とした恐怖、このような場合、経過を慎重にフォローするべきです。