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うつ病と抜毛症を併発された患者さんの治療

うつ病と抜毛症を併発された患者さんの治療 

 精神症状は抑うつ症状、不安症状、パニック症状など自覚的な症状がほとんどですが、長年「性格的なクセ」として無意識に気に留めなかったことが、あることをきっかけに悪化し悩ましい症状として出現することがしばしばあります。







たとえば、抜毛症(抜毛癖:習慣および衝動の障害)です。







 数年前、職場のストレスをきっかけにうつ病を発症され来院された患者さんがいらっしゃいました。

 主訴は、継続した抑うつ、不安、不眠であったため、休職にて自宅療養とし抗うつ薬による薬物療法を行いました。

 上記の症状は数か月も経たずに改善し復職にいたりましたが、同時期から、

 「もともと髪をさわったり、抜く癖があったが、うつ病発症をきっかけに悪化して、頻繁に抜いてしまう」

と、抜毛の訴えがありました。







 もともと、「かさぶたや虫刺されなどかきむしる、髪を触る・抜く、爪を噛む」などの身体集中反復行動(BFRB)があったそうですが、大きく問題となることはなかったそうです。





 この身体集中反復行動(BFRB)は遺伝的要因、衝動制御の苦手さ(衝動性)、ストレスなど精神的な負担要素が絡み合い出現しますが、軽度のものを含めるとこの症状をお持ちの方は少なくありません。





 

 治療は、薬物治療、非薬物治療(ストレスを減らす環境調整、行動療法などカウンセリング)があり、個々人の状況により選択します。







丸レッド内服治療はストレスや気分症状の緩和を

(薬物治療では抗うつ薬が第一選択とされる)



・抗うつ薬、漢方など

・背景にある状況(うつ病・不安障害・強迫性障害・愛着障害・発達障害・感覚過敏など)へのアプローチ







丸レッド衝動性のコントロールを行うべきか



・ADHDなどの衝動性の治療をおこなうことでBFRBが緩和することはしばしば認めます。(しかし、ADHD薬によっては抑うつ気分を悪化させる恐れのあるものがあり注意が必要です。)







 上記のケースでは、症状が悪化し抜毛が顕著であったため医療的な対応が必要と判断しましたが、すでに抗うつ薬は内服していたため、それ以外の治療の必要がありました。



 また、衝動性について、落ち着かなさはやや認めるものの、ADHD、衝動性障害の診断には至らないと判断しました。(→ADHD薬は使わない)

 

 抜毛行為は不安な場面における症状悪化を伴うこと、また、易刺激性(感覚過敏)の傾向を認めたため、エビリファイ(アリピプラゾール)を抗うつ薬に追加処方。

(アリピプラゾールは抗うつ薬治療の増強に効果がある、また感覚過敏傾向にも効果あり) 





 上記の患者さんは復職後の生活の安定とともに抜毛症状も改善しました。







抜毛などお悩みのかたはぜひ医師にご相談ください。




名駅さこうメンタルクリニック

丹羽亮平
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