臨床情報「広汎性発達障害のスクリーニング検査 自閉性スペクトル指数日本版(AQ-J)」
広汎性発達障害(自閉性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害)のスクリーニング検査のご紹介です。
広汎性発達障害(pervasive developmental disorders;PDD)は発達のいくつかの面における広範な障害として特徴づけられ,DSM-Ⅳ-TRでは自閉性障害,レット障害,小児期崩壊性障害,アスペルガー障害,特定不能の広汎性発達障害(PDDNOS)に分けられています。PDDとは,①相互性対人関係の質的な問題,②コミュニケーションの質的な問題,③行動・興味の限定的,反復的で常同的な様式,の3つの領域に障害があることで特徴づけられる疾患です。本人の抱える困難さはPDDの中核症状である対人相互性の障害のために生じることが多く,年齢が大きくなりコミュニケーションがより複雑になってくるにつれて対人関係でのトラブルが目立ってくることが多いのではないかと思います。
自閉性スペクトル指数(Autism-Spectrum Question; AQ)は50項目の自己式質問紙であり、一般人にも存在する自閉性を把握することを意図して作成された性格傾向尺度であるとともに、高機能の広汎性発達障害のスクリーニング尺度としての機能も意図したものです。
私はこれまでPDDを対象とした臨床試験を行う時に、AQ-Jを使用してきました。本邦においてPDDに対する半構造化面接の使用は可能ですが、時間がかかり日常臨床での使用は困難であったため診断の補助検査としてAQ-Jを取り入れていました。AQ-Jは保険適応となっている心理検査となりますので、医療機関にて行う検査となります。
カットオフ値はいろいろなデータがでています。ADHDの自己記入式検査のASRSも同様ですが、スクリーニング検査はあくまでも検査の一つにすぎないため、これだけで診断を確定することはできません。カットオフ値以下であっても診断がつく可能性はありますので、心配な場合には医療機関を受診した方がいいでしょう。確定診断のためには詳細な検査、問診が必要となるため、専門機関への受診が必要です。
記事作成 加藤晃司(医療法人永朋会)