臨床情報 「ギフテッドにて悩むお子さんへの支援② 具体例」
ギフテッドにて悩むお子さんへの支援② 具体例
前回のブログのつづきになります。
ギフテッドのお子さんについて、具体的な支援の例をあげていきたいと思います。
前回に引き続き、以下のような患者さんの例です。
丸レッド11歳男児。幼少期から言語機能が高く、知的好奇心の高いお子さんだった。
小学校入学後、あまりクラスになじめない感覚があった。
授業が面白くなく、宿題を出さないことが何度もあったため、学力のわりに成績表はよくなかっ他。
小学2年夏休み明けから不登校となった。
心理検査にて、全IQ130台。言語機能に比較すると作業記憶が低めのばらつきあり。
(詳しくは前回ブログを参照)
問診にて、以下のような見立てを行いました。
『ADHDの傾向、感覚過敏を認識。
対人交流の難しさは、衝動性に伴うものか、知的能力が極端に高く周囲と話題が合わない可能性によるものかもしれない。純粋なコミュニケーション障害の有無は判断できない。』
では、実際の支援について、
①いわゆる学力など、知的能力を個人に合わせて伸ばすこと。
興味や希望に応じて、分野別に特化した知識や能力を伸ばすこと。
②対人能力や感情のコントロール、規則正しい生活など、気持ちよく社会で暮らせるようなスキルを伸ばすこと。
を軸に考えていきます。
・まず、社会的なスキルや対人交流を行う場所、体をつかった運動を行うプログラムがある点で、やはり学校に通うことはバランス良い活動です。
(ギフテッドの方にとって、「学習面の成長」はあまり期待できないかもしれないですが)
日中により充実した適応的な環境がない限り、
感覚過敏、発達障害、ADHDに対する配慮にて通学ができるのであれば、学校にもどることを目指したいです。
・塾への適応はどうでしょうか?
中学受験は小学校の基本的学力よりも非常に難易度の高い内容が要求されます。
ギフテッドのお子さんでは、塾の勉強にて学習意欲が満たすことができたり、話の合う同級生と交流ができるケースが少なくありません。
ギフテッドの高い能力ゆえに、地元の学校には(居心地の良い環境がない、同級生と会話が合わない、などで)通学できない方で、塾には定期的に通塾できるようなら、それで構わないと思います。
(中学受験以降、能力にあった学校に通うことで不登校が解消されることが予想される場合)
右矢印今回のケースは、中学受験塾における問題はなく適応は非常によかった。
週3回、塾にて同級生と交流したり学習意欲も満足できた。成績もよかった。
(問題を解くことへの過集中、やや退屈な授業中への集中のしにくさはあるが許容範囲内だった。計算問題などのケアレスミスは目立つ。)
学校に関して、感覚過敏に対してノイズシャットの耳栓を適宜使用。
学校が非常に協力的かつ柔軟に対応してくださり、支援級への転籍が可能となった。
体育や美術などは普通級への参加あり。
支援級でも児童にあわせた学習を取り入れてくれた。(算数の授業などは、塾のテキストなどを自習することがあった。)
・地域の利用できる学習環境のリソースと、ギフテッド児の能力のグラデーションにより対応は非常に異なります!!
他に、少なくありませんが、、
2Eの方にて悩まれるケースは、
①高い知的好奇心と分野により高い能力を伴うものの、学力にバラツキがある場合。
例えば、数学や科学的知識に興味があるが、興味のない勉強に向き合うことができない。
字をかく苦手さがある。漢字が覚えられない。
②発達特性にて顕著な社会的なトラブル、対人交流の問題がある場合。
例えば、対人交流の苦手さをいろんな場面で認める。
(興味を同じにする相手でも、対人交流が難しい)
退屈な場面でじっとしていられない、相手の話がきけない、癇癪などで問題になりやすい。
このような際は、ギフテッドへの環境設定だけではなく、医療的な介入も考慮をする必要があると思います。
名駅さこうメンタルクリニック
院長
丹羽亮平