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20歳未満のうつ症状に対して、TMS治療は有効か?そのメカニズム、根拠は?、名古屋の児童精神科医が解説

20歳未満のうつ症状に対して、TMS治療は有効か?そのメカニズム、根拠は?、名古屋の児童精神科医が解説

こんにちは、名古屋市千種区 児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。


**TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)**が20歳未満のうつ症状に対して有効であるかどうかについて、以下の観点から説明します。

1. TMS治療のメカニズム
TMS治療は、非侵襲的な治療法で、脳の特定の部位に磁気パルスを適用して神経活動を調節します。特に、うつ病の治療においては、前頭前野(特に左背外側前頭前野)に磁気刺激を与えることで、神経活動を活性化し、症状の改善を図ります。

ニューロンの可塑性の促進:TMSはシナプス可塑性を促進し、脳内の神経回路の再編を助けると考えられています。これにより、うつ病に関連する機能不全の神経回路が改善される可能性があります。

神経伝達物質の調節:TMSによる刺激が、脳内でのセロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリンなどの神経伝達物質の分泌を調節し、気分を改善する効果が期待されます。

脳血流と代謝の改善:TMSは、治療対象となる脳部位の血流を増加させ、脳細胞に酸素と栄養をより多く供給することで、神経機能を改善します。

2. 20歳未満のうつ症状に対するTMSの有効性
TMS治療は、主に成人のうつ病患者に対して行われてきましたが、20歳未満の若年患者に対する研究も進んでいます。

根拠となる研究
研究1: Croarkin et al. (2016)

この研究では、TMSが青少年(13〜18歳)のうつ病患者に対して安全かつ効果的であることが示されました。患者の一部で有意な症状改善が見られ、TMSは若年患者に対する治療選択肢として有望であるとされています。
タイトル: "High-frequency repetitive TMS for adolescent major depressive disorder: Safety and efficacy of 10 Hz stimulation."
研究2: Wall et al. (2011)

この研究は、TMSが従来の治療に抵抗性を示す若年のうつ病患者に対しても効果的である可能性を示しました。治療後、患者のうつ症状に顕著な改善が見られました。
タイトル: "Safety and efficacy of repetitive transcranial magnetic stimulation in the treatment of adolescent major depressive disorder: A review of the literature."

3. TMS治療の利点と考慮点
非侵襲性:TMSは非侵襲的であり、手術や薬物治療に伴うリスクが少ないため、若年患者にも適用しやすいと考えられます。

副作用が少ない:TMS治療の副作用は軽度で一時的なものが多く、例えば頭痛や治療部位の不快感などがありますが、全般的に耐容性が高いです。

まとめ
TMS治療は、20歳未満の若年患者に対するうつ症状の治療に有効である可能性があります。そのメカニズムとしては、神経可塑性の促進、神経伝達物質の調節、脳血流と代謝の改善が挙げられます。研究によると、TMSは従来の治療に抵抗性を示す若年患者に対しても効果を発揮し、安全性が確認されています。ただし、若年患者に対するTMSの適用には、個別の評価が重要であり、治療を開始する前に十分な検討が必要です。