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自己分析が終わっていないのに、他人をみることはできない、とほんとに思う、名古屋の児童精神科医が解説

自己分析が終わっていないのに、他人をみることはできない、とほんとに思う、名古屋の児童精神科医が解説

こんにちは、名古屋市千種区 児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。

今回は、自己分析が終わっていないのに、他人をみることはできない、とほんとに思う、について解説します。

私が精神科を目指して入った出身大学の東海大学医学部付属病院は、新人の教育に精神分析専門医のスーパーバイザーが一人ずつに無料でつく、今となってはお得なシステムでした。当時は毎週スーパービジョンという自己分析の時間があって、めんどくさがっていましたが、今はほんとにありがたかったと思っています。数年後に知りましたが、普通スーパービジョンは1回数万円かかるみたいで、先に教えてほしかったです。

とにかくそのおかげもあって、私たちは、よくわからないままスーパービジョンを受けて、途中具合が悪くなりながら、一人前の精神科医になったと思います。

精神分析家を目指していたわけではなく受けていたわけですが、結果的に分析的な考え方を身に着けることができました。それは言葉では表現しにくく、体感しないとわからない、そこにしかないもの、だと思います。しかし確実に意味のある体験であり、誰がやっても、悪くないですし、最低限のセンスがあればある程度は身につくはずです。それはフロイト先生からはじまった文化の力だと思います。

現代的な精神科には精神分析的な要素は基礎教育には入っていません。多くの精神科医が座学程度しか学ぶことはないでしょう。

最近は一般診療科にいそうな精神科医が増えました。別に悪いことではないのですが、内科とか皮膚科とかの外来みたいだなとは思います。

むしろ心理士の先生の方が、クリニック内で精神科っぽい唯一の存在ではないでしょうか。

他人の過去を振り返るのに、一度も自分の過去を振り返っていないと、正直やり方が分からないというか、何をきいたらいいのか、その材料をどう扱っていくのか、今のどこにつながるのか、とかがまったくわからないはずです。

ただ生育歴を聞くだけなら、AIにやってもらうか、問診票に入れておけばいいのですが、そういうものではないのです。精神科は。

薬を出してごまかしておくだけで勝手によくなる人は、もともとその人の精神的な具合がいいから、勝手によくなっているだけです。

もちろん悪いことではないのですが、わかってそうしているのと、たまたまそうなっているのは違う、と思います。

心理士の先生に心理療法をお願いするとしても、自分もそれが何か理解していなければ、どうなるか推測することができません。推測できないと、間違っているかどうかもわからない、答え合わせもできないようではプロではないでしょう。

自分たちは精神分析的なことを一つの型として教えてもらいました。もちろんそれ以外の型も教えてもらったので、一辺倒にならずにすんでいます。

たまたま今の時代、日本は豊かになり、病態が悪い方減ったと思います。生育歴も悪い人の割合は減ったと思います。だから、たまたまなんとかなっている。

おそらく医師や心理士よりも、患者さんの方が自己分析のレベルがもともと高い場合があるでしょう。

人生で自分に本質的に向き合い続けている人はいるわけで、外来にきた時点で自己分析の深さが治療者を超えている場合、薬を出す以外にやれることがなくなります。もちろんそういうことはあるのですが、それに気が付いてもいないのはちょっと恥ずかしい。

ちゃんとしている人は、壁打ちの自問自答でも自己分析が進みます。心理療法や自分の外来をそのような使い方にしてもらうこともありますが、わかっていないのはつらい。

だから精神科医になる通過儀礼として、最低限の自己分析はするべきだと思っています。

まあそれを言ってくれる人も、教えてあげれる人も、かなり少ないので、日本ではほろびるのだと思います。

私は自分の手の届く範囲の後輩たちには伝えて、トレーニングしていこうと思っています。

医療法人永朋会 和光医院
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