アットドクター

児童精神科医・精神科医・臨床心理士・管理栄養士が
心の悩みに答えるQ&Aサイト

  • 医師・臨床心理士・管理栄養士一覧
  • お問い合わせ
  • よくあるご質問

<再生医療×精神科>TMS治療は発達障害のASD、ADHDに対しても効果を発揮するか?その機序は?名古屋の児童精神科医が解説

<再生医療×精神科>TMS治療は発達障害のASD、ADHDに対しても効果を発揮するか?その機序は?名古屋の児童精神科医が解説

こんにちは、名古屋市千種区 児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。

今回は、TMS治療は発達障害のASD、ADHDに対しても効果を発揮するか?その機序は?について解説します。

TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)は、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)に対しても一定の効果を発揮する可能性があります。 これは、TMSが脳の神経ネットワークに作用し、神経活動を調整するためです。以下にその効果と作用機序を詳しく説明します。

1. TMS治療とASD
① ASDへの適応可能性
主な症状への効果:
社会的コミュニケーションの改善。
繰り返し行動やこだわり行動の軽減。
情緒的な不安定性の緩和。

② ASDにおける脳の異常
ASD患者では、特定の脳領域(例:前頭前野や運動野)の過剰または低下した神経活動が報告されています。
過剰活動: 繰り返し行動や過剰な感覚刺激への反応。
低下活動: 社会的相互作用や共感能力の低下。

③ TMSの作用メカニズム
過剰活動の抑制: 低頻度(1Hz以下)のTMSで過剰に活発な領域を抑制。
低下活動の活性化: 高頻度(10Hz以上)のTMSで低下している領域を刺激。
具体的なターゲット領域:
背外側前頭前野(DLPFC): 注意制御や情動調整の改善。
右側前頭前野: 社会的コミュニケーション能力の向上。

2. TMS治療とADHD
① ADHDへの適応可能性
主な症状への効果:
注意集中力の向上。
衝動性や多動性の軽減。

② ADHDにおける脳の異常
ADHD患者では、以下の脳領域で異常が認められます:
低下活動: 前頭前野、特に右側DLPFC。
神経ネットワークの不全: デフォルトモードネットワーク(DMN)や注意ネットワークの調整が不十分。

③ TMSの作用メカニズム
前頭前野の活性化: ADHDでは低下している右DLPFCの神経活動を、高頻度TMSで活性化します。
神経ネットワークの調整: TMSがDMNとタスクポジティブネットワークのバランスを整えることで、注意集中力が改善されます。
ドーパミン伝達の改善: TMSはドーパミン神経系の調整にも作用し、注意力や行動制御を支える神経伝達を促進します。

3. TMS治療の共通作用機序
① シナプス可塑性の促進
長期増強(LTP)と長期抑圧(LTD):
TMSは脳内でこれらのプロセスを誘導し、シナプス間の接続を強化または調整します。

② 神経伝達物質の調整
TMSはドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌に影響を与えます。これにより、情動調整や注意力が改善されます。

③ ネットワーク活動の再構築
TMSは局所的な神経活動だけでなく、脳全体の神経ネットワーク(例:DMN、前頭-皮質ネットワーク)を調整します。

4. TMS治療の効果に影響する要因
① 治療プロトコル
頻度(低頻度 or 高頻度)、刺激部位、セッション数が効果に影響を与えます。
② 患者の特性
症状の程度や脳の神経活動の個人差により、効果が異なります。
③ 薬物療法との併用
ADHDの場合、TMSは薬物療法(メチルフェニデートなど)と併用することで相乗効果が期待されます。

まとめ
TMS治療は、ASDやADHDの神経活動に対する効果的な治療法となる可能性があります。 それぞれの疾患に特徴的な脳の異常活動をターゲットにすることで、注意集中力、社会的スキル、感情調整などが改善される可能性があります。

内服が効果不十分、副作用で使えない、薬を使わず改善させたい、という方には有効な治療選択肢となります。

当院ではTMS治療導入初期から、20歳未満や発達障害に対しTMS治療を行い、豊富な臨床経験があります。

TMS治療を考慮している方は、ぜひご相談ください。