チック、ADHDとの合併について、名古屋の児童精神科医が解説
チック、ADHDとの合併について、名古屋の児童精神科医が解説
こんにちは、名古屋市千種区 児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。
今回は、チック、ADHDとの合併について、解説します。
ADHD(注意欠如・多動症)とチック(Tic)症は、比較的高い頻度で合併することが知られています。 研究によると、ADHDのある人の 30~60% が何らかのチック症状を経験すると報告されています。以下、ADHDとチックの合併率、発症メカニズム、影響について詳しく説明します。
1. ADHDとチックの合併率
① ADHD患者におけるチック症の頻度
ADHDのある子どもの 30~60% が一時的または慢性的なチック症を持つとされる。
特に 小児期にADHDが診断された場合、チックが併発する確率が高い。
チック症の一種であるトゥレット症候群(Tourette Syndrome)は、ADHDの約20~50%に合併 すると報告されている。
② チック症患者におけるADHDの頻度
トゥレット症候群のある患者の約60~80%がADHDを併発 するとされる。
ADHDとチックは小児期に発症しやすく、脳の発達に関連している可能性が高い。
2. ADHDとチックが合併しやすい理由
ADHDとチックの合併には、脳の神経回路の異常が関連していると考えられています。
① 共通の神経基盤
前頭前野の機能異常
ADHDでは前頭前野の発達が遅れ、衝動制御が苦手。
チックでは前頭前野と大脳基底核(特に尾状核)の調整がうまくいかず、運動の抑制が困難。
両者に共通するのは、「抑制機能の障害」 であり、これがチックとADHDの合併率を高める要因と考えられる。
② ドーパミンの関与
ADHDとチック症のどちらも ドーパミン神経系の異常 が関連している。
ADHDでは ドーパミン不足 により注意力や行動制御が困難。
チック症では ドーパミン過剰 により、意図しない運動や発声が出やすくなる。
このバランスの崩れが、ADHDとチックの合併に影響を与えている可能性が高い。
③ 遺伝的要因
ADHDとチック症の両方に関与する遺伝子(例: DRD4、DAT1 などのドーパミン関連遺伝子)が共通している。
家族内でADHDとチックがともに見られるケースが多く、遺伝的要因があると考えられる。
4. ADHDとチックの治療
① ADHD治療とチックの関係
メチルフェニデート(コンサータ・リタリン) → ドーパミン活性を高めるため、チックが悪化する可能性 あり。
アトモキセチン(ストラテラ) → ノルアドレナリン系に作用し、チックの影響が少ない とされる。
グアンファシン(インチュニブ) → ADHDとチックの両方に有効な可能性があり、小児の治療に使われることが多い。
② チックの治療
軽度のチックは経過観察(成長とともに改善するケースも多い)。
重度のチックは抗ドーパミン薬(リスペリドン、アリピプラゾール)を使用 することがある。
まとめ
ADHDのある人の30~60%がチック症を合併し、トゥレット症候群の場合はADHDの合併率が60~80%に達する。
ドーパミンの調整異常、前頭前野と大脳基底核の機能障害、遺伝的要因が関与している。
特に治療に関してはドパミンを活性化させる可能性のある、コンサータ、ビバンセは、最初から使わない方がいいでしょう。
しかしADHDが改善することで、チック症状も落ちつく可能性ありますから、併存しているかどうかのチェックは非常に重要です。
何か気になることがあれば、当院へご相談ください。
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