強迫性障害に対する、TMS治療、左前頭前野への連続照射は効果を発揮するか?名古屋の児童精神科医が解説
強迫性障害に対する、TMS治療、左前頭前野への連続照射は効果を発揮するか?名古屋の児童精神科医が解説
こんにちは、名古屋市千種区 児童精神科専門クリニック、医療法人永朋会 和光医院、加藤晃司です。
今回は、強迫性障害に対する、TMS治療、左前頭前野への連続照射は効果を発揮するか?について解説します。
強迫性障害(OCD)に対するTMS治療:左前頭前野(左DLPFC)への連続刺激の有効性
1. 強迫性障害(OCD)の神経メカニズム
① OCDは神経回路の異常が関与
前頭皮質-基底核-視床回路(CSTC回路)が過活動を起こしている。
特に補足運動野(SMA)、前頭前野(DLPFC)、眼窩前頭皮質(OFC)の異常が関係。
右DLPFCの過活動が強迫観念の持続に関与しているとされる。
② TMSの主要なターゲット
OCDに対するTMSの標準的なターゲットは以下の通り:
補足運動野(SMA) → 高頻度刺激(興奮)
最もエビデンスが確立されているターゲット
強迫行為(儀式行動)を抑える効果が期待される
右DLPFC(背外側前頭前野) → 低頻度刺激(抑制)
強迫観念の抑制に有効とされる
左DLPFC(背外側前頭前野) → 高頻度刺激(興奮)
標準的なターゲットではないが、うつ症状を伴うOCD患者には有用な可能性
2. 左DLPFCへの連続刺激(高頻度rTMS)のOCDへの影響
① 左DLPFCの役割
左DLPFCは、実行機能や認知制御を担い、感情の調整にも関与。
TMSで活性化すると、前頭前野全体のネットワークが変化し、強迫症状の改善につながる可能性がある。
うつ病では標準治療ターゲットだが、OCDに対する直接的な効果はまだ限定的。
② 研究での報告
OCD患者の一部に、左DLPFCへの高頻度TMSが有効であったとする研究報告はある。
特に、うつ症状を伴うOCDでは、左DLPFCの活性化が気分改善に寄与し、結果として強迫症状が軽減するケースがある。
ただし、標準的なターゲットではないため、他の部位(右DLPFCやSMA)と組み合わせて用いられることが多い。
3. 左DLPFCへのTMSが有効なケース
① うつ症状を伴うOCD
OCD患者の約30~50%がうつ症状を併発 するとされる。
左DLPFCへの高頻度刺激は、抗うつ効果があり、OCD症状の間接的な改善が期待できる。
② 右DLPFCやSMAへのTMSで効果が不十分な場合
OCDに対する右DLPFCの低頻度TMSやSMAの高頻度TMSで効果が限定的な場合、左DLPFCへのTMSを追加するケースがある。
補助的な治療戦略として検討されることがある。
まとめ
✅ 左DLPFCへの高頻度TMSは、OCD患者のうつ症状を改善し、間接的に強迫症状の軽減につながる可能性がある。
✅ しかし、OCDに対する第一選択のTMSターゲットではなく、標準治療は右DLPFC(低頻度)やSMA(高頻度)への刺激。
✅ 右DLPFCやSMAへのTMSと組み合わせることで、治療効果が高まる可能性がある。
✅ OCD症状が強いが、うつ症状も併発しているケースでは、左DLPFCへのTMSが有用な場合がある。
左DLPFCへのTMS(高頻度連続刺激)は、OCDに対する第一選択の治療ターゲットではないが、うつ症状を伴うOCD患者には補助的に有効な可能性がある。
OCDもシンプルに強迫症状だけがあるケースよりも、うつ症状の合併、ADHDやASDの合併を認めるケースの方が多いように思います。
そうすると、総合的にはTMSを左前頭前野への高頻度刺激は有効であると思いますし、実際の治療でも有効だった方が多いです。
薬が効果不十分、薬は使わず治療したい、今使っている薬を減らしたい、方には有効な治療選択肢となるでしょう。
モニターも随時募集しておりますので、ご興味のある方はクリニックまでお問合せください。
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